関係者の素顔に迫るインタビューを競馬ラボがオリジナルで独占掲載中!

塩見覚調教助手

元来より叩き良化型ではあるものの、本年緒戦の大阪杯はショッキングな惨敗。しかし、そこから桜花賞以来のマイル戦で巻き返してきたあたりが、昨年の最優秀3歳馬メイショウマンボのポテンシャルなのだろう。今回はデビュー以来で最も強敵との対戦となるが、G1での激変こそが真骨頂。この中間も、平常心で愛馬を支える塩見覚調教助手に、大一番への感触を聞かせてもらった。

大阪杯惨敗からの立て直し

-:メイショウマンボ(牝4、栗東・飯田祐厩舎)はヴィクトリアマイルで久しぶりのマイル戦でした。ポイントはスタートをして速い流れに対応できるのかということだったと思うのですが、見事に対応して、あわやの2着まで来ましたね。

塩見覚調教助手:目一杯走って、上手に乗ってくれたし、馬も現状の100%を出せたかなと思います。

-:ヴィクトリアマイルを使った後、調整をされて、昨日(6/18)も坂路で歩いているのを見させてもらったんですけど、体つきが大分フックラとして変わってきたなという気がします。

塩:そうですね。大阪杯を使った後にガタンと来て、マイナスからの立て直しだったのが、ヴィクトリアマイルから今回は、去年の秋でいうローズSから秋華賞に近いくらいの感じで、使った後、疲労もなく、そのままスッと来れたので。

-:今回の宝塚記念を迎えるにあたって、体調面はだいぶ戻っていますか?

塩:去年の秋に戻っているような感覚ではいます。

-:1つの心配点としては、宝塚記念というコーナー4つの舞台で、前回マイルで付いて行けている分、前半の折り合いがどうなのかというところが気になるのですが、その辺りは、普段の動きを見てどうですか?

塩:気にはなりますけど、普段の調教は、今日の追い切りにしても、先週の追い切りにしても、落ち着いて折り合って走っているので。レースに行くと、やっぱりテンションが上がるので、最初は馬の後ろに入れるまでは、ちょっと苦労するかなというのは思いますけど、その辺りはジョッキーが何とかしてくれるでしょう。



10日前まではとにかく順調

-:今日(6/19)の追い切りですが、併せ馬の相手がシンゼンレンジャー(準オープン)で飯田先生が騎乗されて、マンボには今村助手が乗って、全体の時計としては82秒台で終いが11.8でしたね。

塩:良い追い切りができたなと。82ぐらいなので、前半600mが16-15-14で、16-15のところでしっかり馬の後ろで折り合って、4コーナーを過ぎてから並び掛けて、という指示で、その通りで抜ける時の脚がピュッとしていたし。

-:しかも、肩ムチ一発ですね。

塩:動く馬なので、最後終いで気合を付けるとか、肩ムチを入れるというのも、あんまりないんですけど、今日は本当にゆっくり折り合って、終いちょっと強め、という理想的な追い切りできたので。

-:時計的に見たら、水準の動きにしか見えないんですけど、実はここのところのCWのコンディションを考えると、やや全体的に時計が掛かっているというか、走りにくそうな馬もいるので、いつもと同じ時計で動けているということは、逆に評価ができるのかなという気はするのです。

塩:追い切り自体も満足はしていたし、終い38も切っているので、良い負荷は掛けられたかなと思っています。今なら、ある程度動かしても、カイバの心配がないぐらい回復していると思っていたので、多少速くなっても厩務員的には全然大丈夫、と。そういった話をしながらの追い切りで、今のところは思い通りに来ていますね。



-:いつも追い切りを終えてから量られているので、今日はまだ量られていない訳なんですけど、先週の体重からしたら……?

塩:そんなに変わっていないと思いますけどね。先週は508でした。

-:508と言ったら、レースから換算したら20キロぐらい増えている訳ですね。

塩:大体、秋が追い切り後500で、レースで488ぐらいの感覚でいくと、プラスで出れるのかな。なんぼか血管が見えたりだとか、皮下脂肪が取れたかなというのが、この1週間で、先週の追い切り後から感じているんですけど、そんな500まで下がっているような感じではないので……。量ってみないと分からないですけど、490キロ台で出られるんじゃないかなとは思っていますけどね。



-:今も馬を見させてもらいましたけど、ムッチリとした良い感じの丸味がありますね。

塩:獣医さんが言う「ケツにもう一回り欲しいね」というのはあるんですけど……。

-:この馬自身は、結構そんなに見栄えのする馬ではないですよね。

塩:見栄えのする馬ではないです。筋肉の付くべきところにボンボンと。

-:しかも、マンボと言えば、この1週間でガラッと変わってくるタイプで。

塩:そう、最後に変わるから。僕が失敗しなければね。最後にもう1つ良くなる可能性がありますよ。G1を獲った時なんかは、最後の1~2日でもう1つ良くなっていたので、そうなると本当に、当日楽しみに迎えられるかなと思いますけどね。

ジョッキーの意気込みにも期待

-:改めてレースを振り返ると、ゲートがあまり良くなかったのは、紅梅Sの時でしたか。その後にやり直して、ちゃんとスタートを切れる練習をされているんですよね。

塩:ちゃんと駐立できるように縛って。でも、賢い馬だったから、暴れたのは初日ぐらいで、3~4回ぐらいしか縛っていなかったとちゃうかな。でも、本当に賢いので、それで観念したというのか、納得したというのか、よく分からへんけど(笑)。

-:それがあったからこそ、ヴィクトリアマイルで良い位置を取れたということに繋がってくると思うので。

塩:スタートも徐々にレースを迎える毎に良くなってきたんで。前回のヴィクトリアマイルにしても、1600で結果は出ていないけど、今なら大丈夫でしょ、というのは厩舎サイドの考えではあったんですけどね。

-:勝ち馬のヴィルシーナの逃げ切りだったんですけど、時計も速かったですしね。

塩:自身も33秒5で上がっているので、これ以上求めるのは。でも、秋と比べたら、もうちょっとかなという差が……。幸四郎ジョッキーの「秋なら突き抜けていた」というのも、分からない訳ではないんですけど。まあ、そこまで持って行けなかったというのが、こっちの厩務員が甘いなということで。


「自身の体調面に関しては、秋ぐらいには戻っているかなと。あと10日で失敗しなければ、戻ったかな、というのは思いますけど」


-:あのレースから気温も上がってきたし、マンボの体調自身は明らかに良くなっていると思うので、今回の宝塚記念はかなり楽しみにしています。

塩:そうですね、体調面に関してはね相手関係は、男馬の一緒に走っていないところは一流ですし、ジェンティルドンナとも初めてですし、簡単ではないのですが、自身の体調面に関しては、秋ぐらいには戻っているかなと。あと10日で失敗しなければ、戻ったかな、というのは思いますけど。

-:距離の2200という距離も全く問題ないですし、あのスタートなら、ある程度中団やや前めに付けれそうですし、上手いレース運びができそうですね。

塩:ジョッキーは最初、折り合うまでは苦労するとは思いますけど、そればっかりは……。



-:幸四郎騎手の腰のケガの状態も、ファンの方は心配されていると思うんですけど、何か話されましたか?

塩:今朝しゃべって「これで壊れても良いぐらいのつもりで頑張りますよ」という話をしていたので、いやいや秋もあるんやからと。でも、意気込みはすごく伝わってきたので。ジョッキーとしてはベテランの域なので、その辺りの体調管理の仕方も分かっているでしょうし、無理をせんように、来週万全になってくれればなと。

-:今の競馬の流れで言うと、あまり馬とジョッキーのコンビというのがない中で、マンボと幸四郎騎手は良いコンビだと思うので。

塩:だから、応援してくれる人が多いのかなと。本当に腕はあるので、自分の体調さえしっかり持ってきてくれれば、上手に乗ってくれるとは思うので。

-:それに応えられるだけの状態にもありますからね。

塩:はい。この感じで行くと、今日でだいぶ馬もスイッチが入って、もう一段階上がるはずというか、上げてもらわないと男馬の一流どころとは勝負になってこないと思うんで、あと10日順調に行けるように頑張りますし、願います。



最強牝馬の座を懸けての一戦

-:今期の緒戦は産経大阪杯で、その前も取材をさせていただいて「結構コンディションも良い」と聞いていたので、楽しみにしていたんですけど、まさかの8頭中の7着という結果でしたね。

塩:まさか、まさかでしたよ。

-:あのレースが終わった後というのは、やっぱりファンの中でも半信半疑に終わってしまった人もいると思うんですよ。それでも、やっぱりヴィクトリアマイルですぐに勝てはしないまでも、僅差の2着と巻き返せましたし、ここでもう1回、改めて強いメイショウマンボというのを期待するということですね。

塩:やっぱり応援してくれるファンの方も多いので、勝ってくれたら、それは理想ですけど、去年の3歳最優秀牝馬なんでね。やっぱり良いレースはしたいですよね。まだ、相手の陣営からしたら「おこがましい」と言われるかもしれないけど、本当の牝馬1番というのは、やっぱり1つの目標ではあるのでね。去年は言われてても、上にジェンティルがいた中で、あの馬は別格扱いだったんですけど、ここで良い勝負したいな、というのは思いますね。

-:ジェンティルドンナも去年3着だっただけに、気合が入っているでしょうしね。

塩:前回の海外のレースでも、やっぱりすごい勝負根性があるんやな、というのは思ったので。普通なら、脚がモゲるんちゃうかというような感じでしたからね。それもトップスピードでしたから。


「今回アカンかったら、素直に男馬とマンボの差を認めようという。今回、もう1回チャンスを下さい、というような感覚ではありますけどね」


-:そのジェンティルドンナを含め、ゴールドシップとか強豪相手でどこまで迫れますかね。

塩:楽しみというか、これでアカンかったら……。大阪杯の時も男馬とどれぐらいやれるか、と思いながら、馬も何とかレースを迎えたんですけど、結局100%の状態ではなかったので、ましてやあの負け方やったんで。今回アカンかったら、素直に男馬とマンボの差を認めようという。今回、もう1回チャンスを下さい、というような感覚ではありますけどね。

-:世界的に牝馬が、競馬の世界でも活躍していますから、マンボが勝っても驚かないでしょうけどね。

塩:いや、めっちゃ驚きますけどね。でも、本当に、今はそれぐらい馬自身の状態は良いんで、どんなもんかなというのがありますね。

-:ファン共々楽しみにしておきます。

塩:よろしくお願いします。あと10日ね。これが魔の10日間ですよ、長いんだ。やっぱり、何やかんやあるので。

-:魔の10日を有意義に過ごしていただいて、メイショウマンボを勝利に導いて下さい。

●ヴィクトリアM前・メイショウマンボについてのインタビューはコチラ⇒



【塩見 覚】Satoru Shiomi

競馬に縁のない過程で育ったが、トレセンで働いていた知人の影響で興味を持つ。静内のグランド牧場で5年の勤務を経て、トレセンへ。ナリタブライアン、メジロパーマー、ナリタタイシン、シルクジャスティス、イイデライナーらを擁した大久保正陽厩舎から、厩舎を渡り歩き、現在の飯田明弘厩舎へ。
これまではオープン馬を一頭しか扱ったことがなかったが、母も手掛けていた自身所縁の血統馬メイショウマンボと運命的な出会いを果たす。デビュー当初のメイショウマンボについては「兄弟も走っていないし、そんなに期待もしてなかったんです。大人しくて自分で乗れたら良いや、ぐらいのスタンスでした」と振り返る。


【高橋 章夫】 Akio Takahashi

1968年、兵庫県西宮市生まれ。独学でモノクロ写真を撮りはじめ、写真事務所勤務を経て、97年にフリーカメラマンに。
栗東トレセンに通い始めて17年。『競馬ラボ』『競馬最強の法則』ほか、競馬以外にも雑誌、単行本で人物や料理撮影などを行なう。これまでに取材した騎手・調教師などのトレセン関係者は数百人に及び、栗東トレセンではその名を知らぬ者がいないほどの存在。取材者としては、異色の競馬観と知識を持ち、懇意にしている秋山真一郎騎手、川島信二騎手らとは、毎週のように競馬談義に花を咲かせている。
毎週、ファインダー越しに競走馬と騎手の機微を鋭く観察。馬の感情や個性を大事に競馬に向き合うことがポリシー。競走馬の顔を撮るのも趣味の一つ。