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高橋隼人調教厩務員

高橋隼人調教厩務員(美浦・柴崎勇厩舎)


容姿だけでははかれない可能性


-:そして、フェアリーSは初重賞制覇と。これだけ使い詰めているけれど、3勝もしているんですよね。3勝馬で桜花賞出るなんて、そんなにいないと思いますが、その次走のアネモネSの5着というのは、馬場が悪すぎて度外視とみていいでしょうか?

高:僕はそう思っていますけれどね。ただ、何か、初めて怒っていたんですよ。競馬が終わった後に。いつもはスッキリするんですよ、ガス抜きみたいな感じで。

-:スッキリして帰ってくると。

高:そう(笑)。スッキリして帰ってくるはずなのに、前走だけは、もう何かイライライライラしていたので。

-:「こんな悪い馬場で走らせないでよ!」みたいな(笑)。

高:そうそう(笑)。やっぱりストレスになったのか。顔に泥がベッタリ付いているのが嫌だったのか。で、「疲れくるかな~」と思ったんですけど、それよりも何か、使って良くなった感じなので良かったです。「疲れがきたら嫌だな~」って思っていたんですけど。

-:今よりもまだ毛ヅヤは良くなりますよね?

高:ああ、良くなりますよ。今、冬毛が抜けている最中なんですよ。汗をかかなかったらまだキレイに見えるんですけどね(笑)。



-:出走時の馬体重はどれくらいが目標ですか?

高:440キロ前後ですね。やっぱり維持したいです。フェアリーSのときのイメージで行きたいですね。

-:ここまで色々お話を聞いて、これまでの戦歴をみてみると、若干、オークス向きの馬かな?という気もします……。

高:そうですね。ボクも「そこかな~」って思ったんですけど。1800mは経験しているけれど、まだ2000m以上ってないから……。その、折り合い面ですよね。

-:でも(折り合いは)付きそうですよね?

高:付いてくれると思うんですけどねえ。

-:まあコーナーの数が変わってきて、2つか4つかっていうのは、気にする馬は気にしちゃうと思うんですけど、それさえクリアしてくれたらたぶん……。

高:そうですねえ。シッカリ脚をタメられるんじゃないかな。若いときも中舘さんが「ゴールしてからも止まんないよ」って言っていたんですよ。だからそういう意味で「あ、長い距離でもいけるのかな」って。単純ですけれどね(笑)。

-:いやいや、それはあると思う。それだけ止まらないんだから。スタミナは体に似合わず……。

高:はい、あると思うんですけどね。

-:この馬の馬体的な良さはどこですか?さっき筋肉が全体に付いてきたっていうお話でしたが。

高:筋肉が付いてきたことが今のパフォーマンスを発揮できる要因でもあるだろうし、あとは気持ちですよね、やっぱり。精神面かなあ。走るのに真面目なところがいいんじゃないですかね。



-:ココで初めて歩いているのを見て、「この体でよく3つも勝ってきたな」っていう。しかも今度で10戦目。結構凄いことじゃないでしょうか。

高:だけどまあ、10戦してなかったら今はありませんから。勉強してきて、勉強してきて、っていうところがあって重賞を勝てたと思うので。ジョッキーたちが色んなことを教えてくれて。

-:未勝利勝つまで5戦している間にかなり勉強して?

高:そうですね。1戦、1戦、変わっていったのが目に見えて……。

-:レース内容も追い込み一辺倒だけじゃなくて、勝たせたいレースのときは前々でちゃんと我慢もできて……。

高:そうですね。あと、津村くんが赤松賞を勝ったときからイメージを持って乗ってくれているじゃないですか。それでフェアリーSのときは良さを出してくれたんじゃないかなと思いますね。また違う乗り役だったら、もしかしたら勝てなかったんじゃないかな、とか思ったりもしちゃうような(笑)。もう僅差の競馬だったから……。

-:競馬はコンマゼロ、何センチの世界ですからねえ。

高:だから、分かってくれているというか、信じてやってくれているんで。

-:この馬って若干、コッチ(左)が強いんですか?

高:トモですか?今はそうでもないです。前はバランスが良くなかった時期もありましたけど、今はイイです。

-:作戦としては、もう「内から差す」と思っていいでしょうか。

高:そうですねえ。津村くんにはこの間みたいな競馬をしてほしいです。負けはしましたが、アネモネSみたいな。形としては凄く上手く乗ってくれたんじゃないかなと思うんですけどね。ただ結果が良くなかっただけで。シッカリ内でタメられて、徐々に出していって、上手く直線でも外に出せていたので。ああいうレースをしてほしいなあと、ボク個人では思いますけど。

-:じゃあ、ジュベナイルみたいな枠(15番)じゃなく?

高:ちょっと内目の方がイイですね、はい。みんなそうやって思っているんでしょうが(笑)。



-:この馬も、ブエナビスタじゃないけど、見かけからは想像つかない切れがありますよね。

高:ああ、そうですよねえ。見かけでそんな感じしないですよねえ。「未勝利だよ」って言ったら、「ああ、未勝利か」みたいな(笑)。

-:正直、ゼッケン付けてなかったら、トーセンベニザクラなんて分からなかったかも(笑)。

高:分からないですよね(笑)。まあ、美浦で自分たちの運動場だったらシャドーロール付けているので、それで気付く人はいますけど、普通はたぶん分かんないですよ。

-:では、長くなりましたが、ファン方々に一言まとめて下さい。

高:ハハハ(笑)。そうですね……。うーん、まあ具合良くきていると思います。応援してください!

「初勝利までに5戦を要すも…」
高橋隼人調教厩務員インタビュー前半→

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(取材・写真)高橋章夫




【高橋 隼人】 Hayato Takahashi

父はミホシンザンを担当したこともある厩務員。坂東牧場の牧夫を経て、JRAの厩務員過程を通過。最初にトレセンで就業したのは浅野洋一郎厩舎。浅野厩舎で約3年間の勤務し、現在の柴崎勇厩舎に。これまでに担当した中の活躍馬はアポロラムセス。
馬を接する時のモットーは「走る馬でも走らない馬でも変わらずやる、ということ。必要なことはやらなきゃいけないと思うし、走るからといって変なふうに触りたくない、って感じです。怒るときは怒ったり、とか、そういうのは走る馬でも、走らない馬でも同じかなと思います」