関係者の素顔に迫るインタビューを競馬ラボがオリジナルで独占掲載中!

松山弘平騎手

松山弘平騎手


全8勝を松山弘平騎手とのコンビで挙げているドリームバレンチノ。重賞連勝を狙ったキーンランドCこそ0.6秒差の7着に敗れたが、その背には騎乗停止中により当人の姿はなかった。よりメンバーが強力となるG1で人気面こそライバル達に譲りそうだが、巻き返しに向けての要素は決して少なくない。今回は誰よりも内なる闘志を秘めているであろう主戦騎手に、本番に向けての臨戦過程と好走条件を伺った。

最強のコンビが悲願の舞台で復活

-:よろしくお願いします。ドリームバレンチノの1週前追い切りですが、今日(20日)は雨上がりの馬場状態で、どの馬も13秒を切れない重たい馬場でしたが、どうでしたか?

松山弘平騎手:全体の時計は速くなかったのですけど、坂路で54.6ぐらいの時計を出しました。終いを伸ばす調教をしたかったので、終いをシッカリ伸ばしたんですけど、ラストは12.3で動いていました。

-:そんなに出ていたんですか?12秒台が出ている馬は少なかったですよ。

松:そうなんですよ。なおかつ、前半時計が出ていたので、良い調教だったんじゃないかと思います。馬場状態も考えて、最後もしっかりとやれましたし、良い感じに仕上がってきました。

-:先週、乗った時は反応というか、元気さが欲しいとのことでしたが?

松:反応は良かったんですけど、先週もラスト11.8で動いているので。だけど、跨っていて少し元気がないのかなというところがあったんですけど、先週もちゃんと終い時計を出しているので、今週はだいぶ気合が乗ってきました。山からずっと歩いて行ったんですけど、自分からハミをとってテクテク歩いていく感じで、すごく調子自体は上がってきているんじゃないかなと感じました。

-:逍遥馬道でそのような手応えを感じたということですね?

松:だいぶ気合が乗っているなという感じですね。



-:前回のキーランドCは(騎乗停止中)乗ってなかったですが、外から見ていてどのような印象を受けましたか?

松:う~ん、そうですね、乗っていないので、何とも言えないんですけど……。

-:着順でいうと思ったより負けたなという感じでしたが?

松:もっとやれる馬だと思うので、かと言って騎乗が悪かったとは思えないですし、外枠と内枠の馬場差もあったと思うんですけど、それにしても負け過ぎかなという気はしましたね。

-:そういう中でG1を迎える訳ですが、1回ロードカナロアとは(函館SSで)対戦していますね?

松:勝っていますし、それだけの馬だと思っているので、何とか結果を出したいですね。でも相手がそれ以上にたくさん出てくるので。

-:1200mのG1だと、実績がそのまま着順に出てくるというシビアな舞台ですが?

松:甘いもんじゃないですね。やっぱり……。

-:この馬のポテンシャルというか、伸びしろはどうですか?

松:どうでしょうか。まだ頑張ってくれると思います。

-:この馬はテンに速く入っても終い伸びることもあるし、かと言って勝ち時計が遅いこともありますが、中山の1200mという舞台を考えた時にプラスかマイナスかはどのように感じていますか?

松:僕は中山は合うと思います。中山は1回乗って、あの時(ラピスラズリS)は4着だったんですけど、すごく感触が良かったんですよね。まあ、具合も良かったですけど。

-:中山コースの合う馬、合わない馬というのが1200mでもあると思います。

松:それを聞かれるとちょっと難しいですね。走りやすそうでしたが。坂は別に苦手ではないと思いますし、どこでも走れる馬ではあるんです。京都でも勝っていますし、小倉とか函館の小回りでも勝っています。結構オールマイテイィに対応できる馬なので、コースとか自体は問題ないと思いますね。あとは洋芝でない方が良いんじゃないかと思っています。

前回中山コースのリベンジを!

-:自身も先週(9/15~17)は3勝して好調ですね。

松:人気している馬に結構乗せてもらっていたので、その割にチグハグなレースがあって納得して負けたとかなら良いのですが、ちょっと納得しきれないレースがあったので、その辺が……。

-:ちなみに納得できなかったレースはどのレースですか?

松:月曜日(9/17)のメインレース(仲冬S・4着)のイチオクノホシとかはあまり上手く乗れなかったですね。

-:もっとどう乗りたかったのですか?

松:う~ん、そうですね、勝ち馬に早目に被せられるような形になってしまって、ちょっとスムーズじゃなかったので……。そうレースもありましたし、3勝という結果に満足はしていません。

-:5勝しても良かったぐらいでしたか?

松:うん、そうですね。

-:G1ですので関東のファンにも松山というジョッキーをアピールして下さい。馬券を買う人にはG1しか買わないファンもいると思いますので。

松:ちょっと(主旨が)変わってもいいですか?前回、中山(ラピスラズリS)でバレンチノに乗った時に詰まって追えないようなレースだったんですよ。

-:それで4着だった訳ですね?

松:そうなんですよ。それがなかったら普通に勝っていたと思うんですけど、その時のリベンジを果たしたいなと思います。



-:じゃあもう1回詰まることがないように。枠順もまだ判りませんが。

松:そうですね。でも判らないですけど、大丈夫です。

-:青写真というか、どこから行ってどうやってゴールに辿り着くというのが理想ですか?

松:中団か中団よりちょっと後ろぐらいで、直線は外にスッと出せたら、終いは伸びてくれると思うので、それが理想ではあるのですが、最近スタートが良くないんですよ。ここ2走。函館の時もですし、札幌の時もですし、洋芝だからなのか分からないですけど、その辺はちょっと気掛かりではありますね。やっぱりそうなるとレース自体が難しくなるんですよ。

-:出遅れてしまうと、出来ることが限られてきますからね。

松:そうなんですよ。スタートさえ出てくれれば、そこから下げようが、位置取りとしては取りやすいんですけど、スタートが遅れてしまうと、結構決められてしまうというか……。遅れて出して行ったら引っ掛かってしまいますし、スタートはすごく大事だなと思います。1200mですし、出遅れる訳にはいかないですからね。

-:その辺は厩舎の人たちと話して、調教メニューとかオーダーしているのですか?

松:ゲート練習は普通に速いので、やっぱり馬の気分とか、奇数だったら先入れですし、その辺とかもあると思うんですね。

-:厩務員さんにテクニックを使ってもらって、なるべく後入れにしてもらうだとかは?

松:それは出来ないんで……。まあ、そういった面で1200mを使っている馬なので、ある程度の気合乗りが欲しいんですよね、僕としては。徐々に気合が乗ってきて、今日なんかは良かったのかなと。あと1週間あるので、上手く調整したいなと思います。

乗り手だけが分かる勝てる感触

-:ちなみにファンの人はパドックをよく見ると思うのですが、ロードカナロアに勝った時のパドックに跨った際のテンション、気合、それを口で表現するとどのような感じでしたか?

松:う~ん、半端ないです!おとなしい馬なんですけど、その中でも気持ちが詰まっているというか、これは(重賞でも)勝てるかもと思いましたものね。

-:風船が膨らんでいる感じがしたのですか?

松:返し馬に行った時に弾けましたからね。ビューンと。

-:となると、ファンが外見から判断するのは難しいですね。

松:難しいかもしれません。乗った感覚でしかないと思います。それは馬体とかはいつも良いですし、毛艶も良いですし。



-:ちょっとトモが足らないかな?

松:どうですかね。しっかりしてきていますけどね。

-:北海道で活躍する馬の中には滞在型がいますよね。イレ込みがスゴくて、当日輸送より滞在の方が良いタイプとか、そういうタイプではないですよね?

松:そういうタイプではないです。どこでも走れますし、輸送は小倉とか福島とか何回も経験しているので、そういった面では精神的に強いなというのはありますね。

-:好調子の夏前の状態を維持できていれば、おもしろいですか?

松:はい、そうですね。やっぱり僕としてもスゴく気持ちの入る馬で、ずっと乗っていますし、そういった面でも何とかここで結果を出して、お世話になっている加用先生にも恩返しが出来るような形になれば良いなと思います。

-:では、最後にファンの方にアピールをお願いします。

松:G1級の馬ばっかりですけど、この馬も負けていないと思います。チャンスがない訳ではないと思うので。頑張ります。応援よろしくお願いします。

-:ちょっと雨が降って中山の内がちょっと荒れてきて、外差し傾向になれば、より良いかなという感じですね。

松:まあ、本当にこの馬にとって良い流れになってくれれば一番理想ですね。

-:分かりました。ありがとうございました。


(取材・写真)高橋章夫




【松山 弘平】Kouhei Matsuyama

1990年 兵庫県出身。
JRA初騎乗・初勝利
09年3月1日 1回小倉8日1R トミケンプライマリ
JRA通算成績は146勝 (12/09/23現在)


■主な重賞勝ち
・12年 函館スプリントS(ドリームバレンチノ号)
・12年 中日新聞杯(スマートギア号)


小学校の頃から阪神競馬場の乗馬センターに通い騎手を志す。一度は騎手試験に失敗したが、二度目の挑戦で念願の騎手試験に合格。丸山元気、国分兄弟らと同期として過ごす。 デビューイヤーは36勝をマークしてJRA賞を受賞するも、2年目は30勝、3年目の昨年は26勝と勝ち鞍が減少。巻き返しに意欲を燃やした今年は節目の通算100勝に到達しただけでなく、重賞勝ちも経験。 この夏は競馬ラボで夏季限定コラムを担当するなど、競馬ラボではお馴染みの存在。甘いマスクで女性人気もうなぎ登りだ。