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須貝尚介調教師

須貝尚介調教師(S.R.S)

秋の始動戦として選んだ毎日王冠が12番人気を覆す激走。競馬ラボでは「トレセンLIVE!」の榎本優也調教助手が担当していることからお馴染みのジャスタウェイだが、その内容や調教でゴールドシップと互角以上の動きを見せていることから、夏を挟んでの成長は計り知れないものがある。こちらもお馴染みの須貝尚介調教師に、新コンビ内田博幸騎手とで臨む天皇賞(秋)への感触を訊ねてきた。

東京2000mに対応できる下地

-:ジャスタウェイですが、毎日王冠では素晴らしい伸び脚でした。天皇賞(秋)に中2週で出走しますが、中間の状態について教えて下さい。

須貝尚介調教師:全然良いね、使ってから。使う前も夏場の成長には驚かされましたが、毎日王冠は一つの選択肢として1800mというのを選んだんだけど、それは“マイルの馬なのか、1800mよりも距離が持つのか”ということでした。それにここはすごいメンバーが出て来てたことは確かだし、その強豪達との比較もしたかったというところがありました。結果的に上がり最速(33.0)で惜しい2着という結果だったんですけど、これで選択の幅が広がったのと強豪相手でもこれだけやれるということも確認できたので、天皇賞(秋)を選んだ訳です。

-:1800mであの競馬が出来たことで、2000mにも対応できるだろうということですね?

尚:東京は1周回る訳ではなくて、ほぼ向正面からのスタートで、マイルに似たコーナーリングなので。

-:ジャスタウェイと言えば、春もアーリントンCで良い脚を見せて、その後のレースに駒を進めた訳ですが、今振り返ると若干、疲れが残っていたシーズン後半だったのかなと思うのですが?

尚:いや、疲れが残っていたというか、この馬は2歳の時から、使った後のメンテナンスにかなり時間が掛かったんですよ。でも、それがこの秋から時間が掛からなくなったという意味では、そういうのも含めて成長度が窺えましたね。



-:それが先生のおっしゃる良化というか、成長度ですね?

尚:成長している。はっきり言って、良い筋肉で少し重くなっていた部分もありますよね。あれは想定内でしたから。

-:こちらに帰ってきて入厩して来た時の体重が確か20キロぐらいは大きくなっているということでしたが、肉体的に大きくなっただけではなくて、内蔵面も?

尚:内臓面もそうだし、馬がシッカリしてきました。

-:その辺が坂路の動きにも出ていますね。

尚:出てるね。ゴールドシップが神戸新聞杯を使う前にアオるぐらいの勢いだったのでね。

-:今週の1週前追い切りなんですけど、昨日(10/17)ビームライフル(3歳500万)と併せまして、動きは良かったですね。

尚:まあ、あれでも軽く馬なり程度しかやっていないので。レースまで期間が短いので、そんなにメッキリとはいく必要もないしね。

-:先生の指示としては中2週も考えて、昨日の馬場で55秒ぐらいで良いよということですね?

尚:それは十分ですね。

-:それが実際は53.9という時計で、状態が良い分、反応が良かったですね。

尚:反応が良いからね。まあ、あんまり時計は参考にしなくて良いと思う。動き自体が良かったんで。



-:やっぱりこの馬は坂路で見ていても、じっくり並んで併せ馬をするというより、スッと交わして行く切れがありますよね。

尚:うん、乗りやすいしね、ジョッキーも。まあ、テンションが高くなればハミを噛んでしまうところもあるけれど、そういうところを気を付けていれば。

-:あとは斤量なんですけど、前回は54キロで、勝ったカレンブラックヒルとは2キロ差がありました。今回は56キロで同じです。

尚:まあ、でも古馬よりは軽くなっている訳でしょ。毎日王冠では秋山君も上手く乗っていたし、カレンブラックヒルも強い競馬をしていました。やっぱり、あれは勝ち馬を称賛してあげるべきでしょう。ウチのジャスタもよく2着に食い込んだなという気持ちもあります。

-:秋のG1戦線の中で、強い3歳世代が毎日王冠でワンツーを決める年というのはかなり珍しいと思います。

尚:今年の3歳世代というのはかなりレベルが高いんでしょうね。

厩舎と相性の良い内田騎手とコンビ結成

-:先生にとって天皇賞(秋)というと、印象はありますか?

尚:天皇賞は取りたいレースなんですよ。そこに出走できるというだけでも嬉しいんですけどね。まあ、チャンスがないこともないので、どうにか良い競馬をして欲しいですよね。

-:これだけパワーアップをしたジャスタウェイだったら、2000mで古馬一線級とでも互角に戦えるという手応えはありますか?

尚:今の状態なら戦えると思うし、この間の結果もまぐれではないと思います。

-:むしろ1回使って、今度の天皇賞(秋)の方が万全の状態で挑めるということですね?

尚:馬は雰囲気が良いし、輸送慣れもしているのでね。



-:気になるのは体重です。やっぱり減らない方が良いですよね。成長している分を考えると。

尚:体重は多分、同じぐらいでいけると思いますよ。減ったとしても僅かでしょう。

-:ペースがもう少し遅くなった時はどのように想定されますか?

尚:その辺はジョッキーでしょうね。ペース云々というのはジョッキーにしか判らないものだから。

-:今回はジョッキーがテン乗りの内田ジョッキーに替わりますよね。

尚:柴田(善臣)君で良かったんだけど、先約(ナカヤマナイトに騎乗予定)があるということだったので。それでジョッキーを誰にしようかなというところで、賞金面で微妙なところもあったので、しばらく空いていたんだけど、突然、内田騎手とご縁あったのでね。


■「今の状態なら古馬と戦えると思うし、この間の結果もまぐれではないと思います」

-:内田騎手が厩舎の看板馬であるゴールドシップ、ジャスタウェイと2週続けて乗る訳ですね?

尚:頑張ってくれたら有り難いなと思います。

-:ジャスタウェイは前回、柴田善臣騎手でテン乗りでも結果が出ていますのでね。

尚:テン乗りでも十分に通用しますよ。癖っていう癖はないのでね。

-:来週の最終追い切りですが、これに関してはどうなりますか?

尚:馬場状態とか雰囲気もあるので、その時に決めたいと思います。

-:当日までに先生が判断して、一番良い選択をするということですね。最後にジャスタウェイを応援してくれているファンにメッセージをお願いします。

尚:銀魂(ぎんたま)の脚本家の大和屋暁さんがオーナーなんで、これでゆくゆくはマンガの材料にでもなれば有り難いなと思っています。まあ、競馬ファンのみならず、マンガファンの皆さんにも浸透できたら良いかなと思います。応援よろしくお願いします。

笑顔の須貝調教師とオツウ

-:大和屋さんといったら、ジャスタウェイも楽しみですが、オツウ(父ハーツクライ)も?

尚:今度、京都の初日(11/3 芝1600牝馬限定)に新馬でオツウという牝馬が福永祐一君で出走する予定なので、そちらもぜひ楽しみにしておいて下さい。

-:これは須貝厩舎の2歳の中でも?

尚:ちょっと楽しみが持てるかなという馬ですね。

-:坂路の動きを見ていても、かなり楽しみかなという気はします。

尚:そうですね。すごくバランスの良い馬です。

-:ジャスタウェイ共々、楽しみにしています。ありがとうございました。


(写真・取材)高橋章夫


【須貝 尚介】 Naosuke Sugai

1966年滋賀県出身。
08年に調教師免許を取得。
09年に厩舎開業。
JRA通算成績は99勝(12/10/21現在)
初出走:
09年3月8日 1回阪神4日目7R ワーキングウーマン(11着)
初勝利:
09年3月14日 1回阪神5日目7R ホッコーワンマン


■重賞勝利
・12年 皐月賞/神戸新聞杯/共同通信杯
(共にゴールドシップ号)
・12年 アーリントンC(ジャスタウェイ号)


父は昨年で定年による引退を迎えた須貝彦三 元・調教師。自身は騎手として4163戦302勝。うち重賞は01年のファンタジーS(キタサンヒボタン)など4勝。 09年は年間10勝だったが、10年は25勝を挙げて飛躍。昨年も29勝をあげると、今年はゴールドシップ、ジャスタウェイを筆頭に勝ち星を量産。今年の北海道シリーズでも目覚しい活躍をみせ、一躍、関西のトップステーブルにのし上がった。 「トレセンLIVE!」でコラムを掲載している榎本優也調教助手が在籍していることでも、競馬ラボではお馴染み。