関係者の素顔に迫るインタビューを競馬ラボがオリジナルで独占掲載中!

田重田静男厩務員

輸送、コンディションに不安なし

-:デビュー時から今まで、半年以上経っていますよね。その中で変わってきたところがあったら教えて下さい。

田:馬自身が大人になったというよりも、気持ちの成長っていうか、人間でもそうだけれど、やんちゃ坊主が少しずつ大人になってくるというか。「みんなは大人になってきた」って言うけれど、僕はまだ中学生、まだ高校生までいかないような、ところかな。体は良くなってきているし、キ甲は抜けて体は大人の体になりつつあるけどね。

-:あとは精神面的な面が、これから伸びる余地があるってことですか。

田:まだ、これからだいぶ伸びると思います。それくらい可能性を感じている馬なんです。

-:じゃあ、子供っぽさが残る状態で、これだけ走ったら将来はかなり楽しみですね。ダービーだけじゃなくその先まで。

田:楽しみだと思います!

-:あとは、雨が得意なのはわかっているじゃないですか。時計勝負になった時にどれぐらいのタイムが出せるのかと、ファンは気になると思うんですけれど、田重田さんから見たらどうでしょう?今回は相手が一気に強くなる状況ですから。それに晴れたら馬場も硬そうです。

田:京都新聞杯を見る限り、それほど気にはしていないね。馬場はオールマイティだと思います。

-:現時点での体重を教えて下さい。

田:前回の競馬で480キロだったから、今は大体プラス2キロぐらいです。

-:もっと増えているかなと思ったんです。

田:いや、この仔は輸送減りしないんです。最初に見た時から、輸送減りしないタイプやなとも思っていたから。



-:輸送減りしないということは、体を見てわかるものなんですか?

田:大体わかるよ。体だけじゃなく気性も関係しているから、トータルで見て判断するんですよ。そんなに神経質な馬でもないし、どちらかといえば、馬運車に乗せてあげたほうが落ち着くタイプやから。やっぱり、イラつかないし、神経質で車の中でイライラするような馬は輸送減りするからね。

-:馬運車での移動とかっていう面では慣れているんですか?

田:慣れたというか、そんなに苦にしない。だからね、作りやすい。自分で体を作るっていうか。アーネストリーやダノンスパシーバでもそう、馬装して測って16キロ引いたら大体、競馬場の馬体重になるんです。でもキズナは、本当の馬装の分だけ、8キロなら8キロ引いたら、レースの体重になる。だからそれ以上引かなくていいっていうこと。

-:逆に輸送の分を残しておくと、重めが残った状態でレースになってしまう危険性が多くなる?

田:そうそう。だからいま現時点で言ったら「486キロありますよ」と。前回使った時よりもプラス6やわね。で、「その状態で保っていきたいと思います」って言った時には、多分、向こうで体重を測ったらプラスでしょう。

-:プラス2とか4とか?

田:4から6。こっちで6だったら6ぐらい。それくらい輸送では減らない。

-:そのへんはファンも調教後の馬体重を出た時に「ここから輸送で減ったらキズナはヤバイな」っていう風には思わないほうがいいですね。

田:思わないほうがいいね。越さないって思ってもらった方がいい。

-:体重はあまり心配することはなさそうですね。コンディション面も疲れはない、輸送も心配ない。

田:今のところは何も心配するところはないです!



ダービーはファンそれぞれで、好きなタイプの馬にエールを

-:来週も強い追い切りはしない方向ですか。

田:しないでしょう。終い重点にやると思います。ちょっと終いの反応をみるというか、それぐらいですね。時計がどうのこうのより、終いをサッとやりたいという感じ。

-:京都新聞杯である程度仕上がっていた状態から、イイ意味で維持して、平行線でダービーへ向かうという感じですね。

田:そうです。それが一番いいと思います。

-:あとは皐月賞組との現実的な力関係で結果がどうなるかと。

田:ロゴタイプだけ弥生賞には使ってないから想定できないね。あとのメンバーとは互角の競馬をしているからね。エピファネイアやコディーノが皐月賞で上位にきたわけだから……、わかるよね(笑)。

-:まだ手合わせしていないロゴタイプが皐月賞を勝ってG1は2勝目。朝日杯をとって、皐月賞もとって、乗りやすそうなオールマイティさが身上なロゴタイプですから、相手にとって不足はないですね。ローテーション的には、あと1週あったら違うやり方とかもできたかなって思ったんですけれど、くどいですがそういう心配はしなくて良さそうですね。

田:最初は自分も心配しとったんですよ。でも、思ったより疲れも残ってないし、良い感じで来ているからね。

-:調教で乗った山田助手に聞いたら「先週は涼しくてよかった」と言っていて、あれが暑かったら、もしかしたら、ヘバってたかもしれないと。

田:そうそうそう。先週涼しかったから馬を回復させるのには良かったねえ。



-:そういう天候も味方に付けないとダービーっていう大きなレースは獲れないんでしょうね。

田:流れもあるし、ダービーっていうのは、力だけじゃなくて、やっぱりいろんな総合的なモノを求められる。能力も一番大事なんやけど、いろんなことが重なって、良い方向に向いたら良いレースができると。

-:恐らくファンは1番人気か2番人気に推してきます、その期待に答えられるように頑張ってください。最後にキズナを応援しているファンにコメントをお願いします。

田:僕が一番好きじゃないのは、関東の馬とか関西の馬とかを区別してメディアも書き立てたりするでしょ。そうじゃなくて、東西どちらの馬であろうが、いちファンの人が一杯いるんやから、だから自分の好きなタイプの馬を一生懸命、応援してもらえるといいな。それが僕らにとって一番励みになるけどね。

-:応援する馬がキズナだったら「皐月賞に出られなかった分までダービーで頑張りますのでヨロシク」、みたいな感じで書いたらいいですか?

田:そうやねぇ(笑)。ダービーというのは3歳の頂点を決めるレースであり、お祭りというか、そういう面で楽しみなレースだからね。ファンの人もこれからの馬に対してワクワクして応援してほしいなという。まだこれから長い道のりの馬が多いから。キズナも頑張ってダービーでいい走りを見せてあげたいと思うし。

-:4強それぞれの馬にファンがいて、その中でキズナを応援してくれる人がいたらいいですね。

田:キズナにはもう大勢ファンがいますけどね(笑)。楽しみなレースになりますから、ダービーはちゃんと現地で応援してくださいよ!

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【田重田 静男】Shizuo Tajyuta

1955年1月10日生まれ。
久保厩舎から、ホースマンとしての第一歩を歩み始めると、昭和47年の京都牝馬特別など10勝したセブンアロー等、そして、宝塚記念を制したアーネストリー、現オープン馬のダノンスパシーバなどを担当してきた。 息子は池江泰寿厩舎で有力馬を担当する田重田調教助手。