関係者の素顔に迫るインタビューを競馬ラボがオリジナルで独占掲載中!

北村浩平調教助手



競馬ラボでは調教師、担当助手、馬主にまで取材を敢行し、G1馬級にお馴染みのジャスタウェイ(牡4、栗東・須貝厩舎)。歯痒さを感じさせずにいられない脚質が、ある種、個性でもあるが、今回の舞台は昨年、並み居る強豪に先着し、クビ差の2着に肉薄した毎日王冠。安定度という面では当時を凌いでおり、アーリントンC以来となる3勝目に期待が懸かる。ゴールドシップの稽古番で知られる北村浩平調教助手に、この中間の態勢を伺った。

この中間は北村助手が調教に騎乗

-:ジャスタウェイについて北村浩平助手にお話をお伺いします。エプソムカップ、関屋記念と続けて2着でした。特に関屋記念では1番人気になって、久しぶりの勝利を期待していたファンも多かったと思います。このレースを振り返っていただいてよろしいですか。

北村浩平調教助手:率直によく2着に来たなっていう感じでした。

-:この馬なりの脚を使ったけど、展開的に不向きだったという感じですか?

北:そうですね。当時は北海道でずっと見ていたんですけれど、この馬の能力はちょっともったいないですね。エプソムの時は、もうゴール板過ぎてからカメラも全部ジャスタしか写していなかったので、こっちも勝ってるものだと思うくらいの気持ちで迎えに行きましたし。

-:僕もゴールした瞬間、担当の榎本助手に「おめでとう」って言ってしまいました(笑)。それでも、ちょっと歯がゆいレースが続いていますね。成長度合いとかを考えると、やっぱり体がしっかりしてきて、2歳3歳の時よりも、今の方が走れる体にあると思うんですけれど、なかなかジャスタウェイの良さがレースで発揮できないという感じで。今朝(9/25)ゴールドシップと併せ馬をして、全体の時計は55秒3と遅めでした。どんな感触だったか教えていただけますか。

北:ゴールドシップはやっぱりすごい馬なので、どうしてもそれに胸を借りるつもりでの併せ馬でした。この馬も重賞で勝ち負けするような、どこに出しても恥ずかしくない馬なので、まあ“しっかりやっていかなあかんな”という意識で追い切りはしました。テンを抑え気味で終いにかけるような追い切りをして、時計自体はちょっと気持ち遅くなったかなというのはあるんですけれど、ゴールドシップに突付かれても、それなりに引っかからず折り合いながら併せ馬をして、しっかり駆け上がったという感じです。

-:力強いフットワークを感じながら乗っていたわけですね。

北:先週も追い切りで跨ったんですけれど、ちょっとモサっとしていたので、ビッシリいくような形でした。今週は1週前で、反応はやっぱり先週よりも比べ物にならないくらい良かったです。また来週もありますしね。



-:ジャスタウェイには今まで榎本助手が乗っていることが多かったんですけれど、北村浩平助手がジャスタウェイに追い切りで乗るのは?

北:しっかり乗る方なので、元々、榎本さんの馬にはあんまり関わりがなかったんです。先週が初めてかなっていうくらい、追い切りで乗ることはまずなかったですね。

-:ファンの方は、榎本助手と北村助手の乗り方の差はあまり意識せずに調教のひとつとして見ると思うんですけれど、その違いはどこにありますか?

北:僕が思うには、榎本さんは無難にまとめて乗ってくる。僕は、ムラはありますけれど、追い切りとかはしっかりやれるんじゃないかな、というイメージで乗っています。

-:元ジョッキーだった分、北村助手の方がちょっと“抜き系”なんですか?

北:乗り方のパターンには、押さえつける乗り方と、引っ張る乗り方が僕はあると思っています。榎本さんとか、もうひとりの助手の山田君などは、押さえつける雰囲気の中で、折り合いをつけるという乗り方です。僕は、どうしても引っ張りながら、そこで抜き差しするという乗り方をしているんですよね。

-:わかりやすく言うと、榎本さんや山田さんは、どちらかというとヨーロッパタイプの乗り方で、北村助手はジャパニズムと。

北:細かいところで、コソコソっとやるようなタイプなんじゃないかとは(笑)。

-:“侘び寂び”を求めている感じですね。

北:そうですね。

-:これまで併せ馬で榎本助手がジャスタウェイに乗っていて、そこで一緒に走ることはあったと思うんですけれども、見て感じていたものと、実際乗って感じたものの差はありますか?

北:ここ最近くらいのことしか僕は言えないんですけれど、ひ弱なところがあった馬が、これだけしっかりやっていけているということは、力強くなっている証拠だと、乗っていても感じ取れるものはありますね。



ベストの東京1800で勝利の美酒を

-:これだけ惜敗が続いていると、距離とか、ベストな条件を限定しつつある状況だと思います。ジャスタウェイのベストは、どの舞台だと思いますか?

北:やっぱり直線の長い東京の1800、または1600くらいがベストなんじゃないかと思います。どうしてもここ最近、ゲートでちょっとあたふたしている部分があって、後ろからの競馬になるので、それを考えたら距離が長いほうがいいのかなって思います。かと言って、出た時は出た時でどうしても引っかかる部分が多々見られると、距離が短いほうがいいんじゃないのかな、と思いますし。

-:初対面の時から、ちょっと条件が限定しづらいというか、距離が長くてもいけそうだし、マイルでもこなせそうだし、逆に難しさがあるとずっと感じでいました。そういうところが成績にも出ていると思います。先週、結構一杯に追って、今週も坂路で行ってると思うんですけれど、体重はどんな感じですか?体型とか締まり具合は。

北:やっぱり、やっていくに連れて締まってくるというのはあります。体重は先週と比べてそんなに変わっていないとは思います。具合が良いので、そこまで一気にガラッと体がガレたとかはないと思います。

-:ここのところ、体重10キロ増が2回続いているじゃないですか。デビュー時からもプラス10キロくらいなんですけれど、見た目が全然違っています。新馬の頃とかは、ひ弱そうな感じの馬だったんのが、今は体重が10キロくらいしか変わっていないのにもかかわらず、すごくガッシリして、男馬らしくなっています。それは久しぶりに乗って感じ取れましたか?

北:大人になっているというのはすごく感じ取れる部分もありますし、プラス10キロでも中身の濃い10キロなんじゃないかなと思います。背丈が伸びているかもしれないですし、筋肉や張りとか、そういうのもあるんじゃないかと思います。

-:追い切りだけじゃなく、この馬にやっていることはなんでしょう?ストレッチとか。

北:準備運動のハッキングである程度ほぐすときに、出かけとかで、もっとストライドを大きくするようにしっかり伸ばしてやったりとか。引っかかる馬ではないと思うんですけれど、引っかかったときのための対処法で、我慢できるように工夫してみたりとか、そういうのは榎本さんもやっていると思いますし、それなりに聞いて僕もやっているつもりです。

-:その辺の地道な効果がジャスタウェイの着順をもうワンステップ上げるんですね。

北:2着と来ていますから、次は1着しかないと思いますし。



-:相手が一気に揃ってくると思うので、楽ではないと思うけれども2着と頑張っていますし、久しぶりの美酒を味わってほしいです。

北:アーリントンから勝っていないんですよね?もったいないですね。

-:すごく個性派で、まだ2勝だっていうのが信じられないくらいの馬です。これからG1戦線に向かうのか、もしくは自己条件のG3とかに向かうのか、どちらにしても賞金は加算しておきたいですね。

北:G3とかG2でも引けをとらない馬だと思っていますし、そこで勝ってG1に挑戦、もしくはG1の馬と一緒のレースに出るような馬やと思っていますし。

-:楽しみにしているファンにメッセージをお願いします。

北:ここ2走、惜敗続きで歯がゆい競馬が続いていますけど、今回は得意の府中で何が何でも頑張ると信じているので、応援お願いします。

-:ペースが関屋記念よりも流れて、ジャスタウェイ向きの流れになってくれたらいいですね。

北:開幕週なので、そこがちょっと心配なんですけどね。

-:前が止まらないとか?でもジャスタウェイも終い32秒くらい使えるし。

北:逆に、馬場がきれいやから、ジャスタも他の馬より1秒でも速い脚を使えるかもしれないので。

-:馬場が硬いというのは、見てるこっちとしてもヒヤヒヤするばかりですが、とにかく安全を祈ってます。

北:無事やったらまた次がありますんで。

-:ファンも多い馬なので、また取材させてください。ありがとうございました。

関屋記念前・ジャスタウェイについてのインタビューはコチラ→





【北村 浩平】 Kohei Kitamura

幼少の頃より馬術で腕を磨き、小学校4年生の時には祇園祭のお稚児さんを務めた。2003年3月に田所秀孝厩舎の所属騎手としてデビュー。初年度より3年連続で2桁勝利をマーク。3年目の2005年にはエリモハリアーで函館記念を制覇し、重賞初勝利。その後はフリー騎手となった後に須貝尚介厩舎に所属。2010年12月20日の騎手引退後は、そのまま同厩舎の調教助手へと転身し現在に至る。


【高橋 章夫】 Akio Takahashi

1968年、兵庫県西宮市生まれ。独学でモノクロ写真を撮りはじめ、写真事務所勤務を経て、97年にフリーカメラマンに。
栗東トレセンに通い始めて17年。『競馬ラボ』『競馬最強の法則』ほか、競馬以外にも雑誌、単行本で人物や料理撮影などを行なう。これまでに取材した騎手・調教師などのトレセン関係者は数百人に及び、栗東トレセンではその名を知らぬ者がいないほどの存在。取材者としては、異色の競馬観と知識を持ち、懇意にしている秋山真一郎騎手、川島信二騎手らとは、毎週のように競馬談義に花を咲かせている。
毎週、ファインダー越しに競走馬と騎手の機微を鋭く観察。馬の感情や個性を大事に競馬に向き合うことがポリシー。競走馬の顔を撮るのも趣味の一つ。