関係者の素顔に迫るインタビューを競馬ラボがオリジナルで独占掲載中!

小滝崇調教助手

ゲートの一歩目に繋げるための工夫

-:スタートに関しては、特に策を施さずデニムアンドルビーの形でという流れですか?

小:特に何かを変えたということはないですが、角馬場での調教の延長線などで、姿勢のバランスや転換を意識してやるようにしています。松田さん(松田全史調教助手)と「こういう感覚でやってみたらどうかな?」と相談しながら、実際に僕が乗ってやっている感じで。

-:角馬場というのは狭い馬場で、そこでハッキング(軽めのキャンター)とかをしているところですよね?

小:そうです。今回の中間は馬場が悪かったので、CWコースの内ラチ沿いとかを凄くゆっくりとしたキャンターで走っていたんです。前までは姿勢を変えたり、ゆっくりさせてあげたりしていたのですが、今度はバランスを少し起こしてあげて、脚がよく前に出るような体勢をとってあげようと。後ろ脚も入ってくるんですけど、前が小さくなりがちなので、今度は前に飛んで行くような感じで。

-:トモが入ることで、前脚がよく出るようするにということですね。

小:それがゲートの一歩目に少しでも繋がればいいなと。周りをキョロキョロ窺っていたとしても、脚が勝手に前に出るようにすれば、ゲートから出ざるを得ないので。

「ペースが速くても“追いかける”と言うよりかは“溜め込む”という意識ですね。前走はおっつけて追走して、そのままのペースで最後まで頑張ってくれたので、今回は“控える”という感覚で行ければいいなと思います」

-:以前にされていた首を下げるという方法はどちらかというと身体を伸ばしてあげるようなトレーニングでしたが、それができてから今回は“縮めるトレーニング”に入っていると?

小:走るときに、身体の伸縮ができるようにということを考えながらやっています。

-:元々この馬は、バネという部分では長けているので、そこにもう少し磨きをかけていけば、秋華賞のような展開になっても最後の伸びが見られるのかな、と思いますね。

小:ペースが速くても「追いかける」と言うよりかは「溜め込む」という意識ですね。前走はおっつけて追走して、そのままのペースで最後まで頑張ってくれたので、今回は「控える」という感覚で行ければいいなと思います。

-:同厩舎のディアデラマドレと同じようなポジションになるかもしれないですね。

小:向こうはゲートを出ないという訳じゃないですけど(笑)、出していった時の成績が良くないようなので、ポツンと行くかもしれないですね。



-:1週前追い切りについて伺っていいですか?

小:坂路で、4F53.3-38.1-24.9-12.6秒でした。案外馬場が悪かったので、終いは何もしていないです。本当は「4F55秒くらいでいい」と言われていたんですけど、走り始めると、ドンドンとスピードが乗って行くタイプなので、自分の意図しないところで時計が出ちゃいましたが、特にオーバーワークというわけではないんです。

-:では、来週の最終追い切りに関しては、そんなにハードにはやらないと。

小:CWコースで1周半走らせる予定です。

-:1週前が坂路で、当週はCWというのはいつものパターンなんですか?

小:水曜日に坂路というパターンは初めてでしたね。今まではいつも水曜日はCWだったので。日曜日に坂路で4F55秒くらいをやっていたりはしましたけど。

-:今日(11/1)も坂路で乗られていましたが、どれくらいのタイムで?

小:4F63.3-15.2秒くらいですね。15-15くらいの、角居厩舎のいつもの時計です。

パドックでは愛想の良さにも注目


-:では、秋華賞の悔しさを胸に……。1番人気に支持してたファンも多いと思うので、巻き返して欲しいですね。

小:エリザベスだったら……、という風に期待してくれるファンの方も多いと思うので。欲を言えば、前回も上手くレースをしてくれれば「大したもんだな」と思えたのですが、強い相手もいましたし、今回はデニムらしさをしっかり発揮して「オオッ、来た来た!」と思っていただけるレースができればいいですね。

-:この京都開催から、JRAが少し馬場を柔らかくするというような話もあるみたいで。まあ実際にはあんまりなっていないんですけれど……、その効果が少しでもあれば、デニムにも向くのかな、と思うのですが。

小:もちろん、パワーはあるので重たい馬場は歓迎ですけど、決して良馬場でもダメとは思わないので。

-:来週には写真が出るのですが、立体的に発達しているこの馬はつくづくカメラマンには不向きだなと思います(笑)。でもスタイルの軽さ、シャープさは十分伝わると思いますよ。

小:そうですね。変な状態ではないことは間違いないです。



-:デニムの表情は、競走馬なのにまったりできている、追い詰められたような顔をしていないところを見てもらうと、状態が悪くないことが一番分かると思います。

小:秋華賞の時も、地下馬道にテレビカメラがあるのですが、他の馬は避けていくのに一頭だけ自分から覗きに行くようなところがありました。愛想が良くて、見られることは好きみたいです。

-:それだけ人間に愛されてきた証拠でしょうか。振り返られたカメラマンは「今、俺のことを見たぞ!」という風になるんじゃないですか(笑)。

小:そうですよね。パドックでも、ファンの方のカメラの方を見たりしています。気になるんでしょうね。

-:多くの人に愛されてきた、デニムアンドルビーの巻き返しを楽しみにしています。まだ1週間ありますので、きっちり仕上げてくださいね。

小:頑張ります。ありがとうございます。

●インタビュー(前半)はコチラ⇒

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●秋華賞前・デニムアンドルビーについてのインタビューはコチラ⇒





【小滝崇】 Takashi Kotaki

小学生の時にエアダブリンやナリタブライアンのレースを観て、競馬の仕事に就くことを目指す。とりわけエアダブリンは高校の夏休みに牧場まで見に行ったほど。
卒業後はノーザンホースパーク、現ノーザンファーム空港牧場、山元トレセンでそれぞれ働き、23歳でトレセンに配属になり野元昭厩舎に配属される。
思い出に残っている馬はエーシンコンファーとエーシンジャッカル。
解散後は現在所属している角居勝彦厩舎に異動して現在に至る。
持ち乗り助手として、デニムアンドルビーを担当している。


【高橋 章夫】 Akio Takahashi

1968年、兵庫県西宮市生まれ。独学でモノクロ写真を撮りはじめ、写真事務所勤務を経て、97年にフリーカメラマンに。
栗東トレセンに通い始めて17年。『競馬ラボ』『競馬最強の法則』ほか、競馬以外にも雑誌、単行本で人物や料理撮影などを行なう。これまでに取材した騎手・調教師などのトレセン関係者は数百人に及び、栗東トレセンではその名を知らぬ者がいないほどの存在。取材者としては、異色の競馬観と知識を持ち、懇意にしている秋山真一郎騎手、川島信二騎手らとは、毎週のように競馬談義に花を咲かせている。
毎週、ファインダー越しに競走馬と騎手の機微を鋭く観察。馬の感情や個性を大事に競馬に向き合うことがポリシー。競走馬の顔を撮るのも趣味の一つ。