平林雅芳の目

トピックス

日曜東京11R
毎日王冠(G2)
芝1800m
勝ちタイム1.44.6

勝ち馬スーパーホーネット(牡5、栗東・矢作厩舎)

■『春より数段いい!』と藤岡佑Jが叫ぶ!

「朝早くから、やけにカメラマンが多いな」と1Rのパドックで感じていたら、三浦Jの新人記録が、それも武豊Jと同じレースで達成の可能性があるということで集まっていたそうだ。
「G1並みやな」とカメラマン達でもささやきが聞こえていたぐらい。
やはり並みの新人扱いではない。
パドックを囲むファンの数はレースを重ねるほどに増えて、メインの毎日王冠の時にはビッシリと人、人で埋まったパドック廻りであった。

重賞で新記録の可能性もあったりしてカメラマンがビッシリで馬のそばまで行けない。
仕方なしに、パドックから馬が出て行く馬道の処で周回する馬を観ていた。
ウオッカはいい雰囲気でユッタリと大きく周回している。
カンパニーはと見ると、ちょっとこじんまりとした感じで圧倒感が出ない。
オースミグラスワンにいたっては、ちょっと気が抜けたラムネって感じ。
もうひとつ覇気がない。
ウオッカの後を歩く馬を観ていても、気迫で上回る馬が居ない。
「うん、負けないな」と思って早めにパドックを後にして、本馬場入場に備えて動いた。

芝コースへと続々入ってきて、それぞれがキャンターで遠ざかっていく姿を観ていてもパドックで見たウオッカの雰囲気が続く。
カンパニーはキャンターに移る時の完歩が小さく見える。
驚くほどに良く見える馬も居なく、後はゲートオープンを待つばかりとなった。

ゲートが開いて内目の馬のスタートがいい。
その中から黄色い勝負服が前に出る。
場内から「ウオッカです」と先頭にたった馬への驚きの口調でアナウンスされた。
いやいや武豊Jなら十分ある事。
展開を常にチェックしている彼、行く馬がそう居なくて、誰かに先手をとられユッタリとしたペースに落とされて、かかってしまうのを避けて自分でレースを作りに行ったのはあり得る事、と納得の行動。
すぐにフィールドベアーが2番手、アドマイヤフジが3番手。
ウオッカと同じぐらいに好スタートを切ったスーパーホーネットは下げて4番手のラチ沿い。
ほとんど同じ隊列で3角、4角と進む。
ウオッカが作るペースはそう遅くもなく早くもないペース。
直線へ向いてもまったく鞍上が仕掛ける感じでなく、少し離した感じさえもする。

後2Fの④と表記してあるハロン棒を過ぎてから武豊Jが追い出す。
前に行っていた中ではフィールドベアーの脚が止まり、ちょっと開いた瞬間に内ラチ沿いを進んでいたスーパーホーネットが外へ出して、あっと言う間にアドマイヤフジに接近して前を行くウオッカに迫っていく。
1Fを過ぎて完全に前に出ていたウオッカと、追いすがるスーパーホーネットの競馬になった。
でも「自分の競馬が出来ているウオッカが負けるわけがない」と思っていた瞬間に、スーパーホーネットが馬体を並ばせて、そしてステッキに呼応してちょっと出たところがゴールであった。
藤岡佑介Jの右ステッキが外へとウイニングポーズをとり、勝利の瞬間に雄たけびをあげたようだ・・・。

馬道の地下道を、先にやってきたスーパーホーネットの藤岡佑Jが検量室前の枠場に向かい大きな声で「春よりいい!」と厩舎サイドに言っているのが聞こえた。
そしてウオッカと武豊Jが引き上げてきた。
ちょっとガッカリ気味だった当方とは違って、武豊Jから「大丈夫、全然心配ないから」との声がかかった。
「本番の天皇賞を指しての事だろう」と解釈するが、トーンが落ちてしまっている当方には励ましにもならない。
やっと気をとりなおしてパトロールビデオを何回も観る。

好発を抑えて内で辛抱している藤岡佑介Jのスーパーホーネット
自分のペースでレースを作り、完璧に競馬をした武豊Jのウオッカ
後続には2馬身の差をつけて離しているのだが、たった1頭だけが追いかけてきたゴール前。
春G1でいい競馬をしたスーパーホーネットがさらに力をつけ、そのままの切れを発揮したという事か。
これも競馬という事だろう。
ゴール前でも追い込まれても絶対に抜かせない、と思っていたウオッカ
でも実際には1頭だけに先着を許してしまった。
「競馬は生きている」そうとしか思えない。
競馬の奥深さと絶対はない、とまたまた再認識された毎日王冠だった。

※しかし収穫もあった東京競馬。
日曜東京3Rの新馬を勝ったミクロコスモス
逃げた和田厩舎のカウアイレーンが1.03.3の絶妙なペースで逃げこまんとするところを33.4と早い上がりを差し切った。
あがってきた武豊Jが「めっちゃ走る!」と言い切った。
どうやら今年一番の賛辞を貰った2歳馬のようであり、牝馬路線のパートナーが決まった感じである。
パドックから落ち着いた馬で雰囲気がいい馬。
ケイコも目一杯には全然やっておらず、まだまだ調整中と思えた仕上がり。
そして美浦に入ってからの東京競馬入りとなった筈。
そんなことを感じさせない落ち着き、レースに行っての集中力。
だから走れるのだろうし、楽しみな馬が出てくれた。