やっぱり、トーホウジャッカルだった!菊を戴冠!!

トーホウジャッカル

14年10月26日(日)4回京都7日目11R 第75回菊花賞(G1)(芝外3000m)

トーホウジャッカル
(牡3、栗東・谷厩舎)
父:スペシャルウィーク
母:トーホウガイア
母父:Unbridled’s Song

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《神戸新聞杯の観戦記》を読み直してみた。橋口師がレースを終えた火曜朝に『菊の相手も2、3着の馬だろうな…』とつぶやいたのを書いておいた。まさしくその言葉どおりと言うか、相手はキッチリと走った。ただワンアンドオンリーが走らなかっただけ。そんな図式の結果であった。レコードは別段にビックリする馬場でもない。確かに内々を通ってきた馬の決着ではあった。外を廻る馬には不利な馬場の伸び具合。それにしても…である。


再び、28日の火曜朝、坂路の監視小屋である。橋口師が来ていたが、何か空気が重い。いつも明るい音無師が入ってきてから少しは室内の温度が上がった気がした。
《先生、あれだけ外を廻ってはね~。6つのカーブがあって、それの全てを外を廻るんだもの。向こう正面ではかなり外を通らされていたしだものね~》と話を向ける。それに橋口師が『枠順が大きかった。あれだけ外々を廻らされるからな~…』と言葉の少ない橋口師であった…。
その前に、上の調教師席で池江師にも話を訊かせて貰っていた。まずはトーセンスターダム。外へ出すのは折り込み済みだった様だ。『それ行けが出来ない馬だから、早めに出して態勢を造らないとね~。伸びてはいるんだけどもね…』であった。トゥザワールドは『距離でしょうね。少し噛んでもいたからね~』と敗因もハッキリ。そして残念だったのがサトノアラジン。『二度、不利を受けていますからね。最初のは用心していたから大丈夫だったけれど、二度目のはもう完全に前に入ってきてますからね。3着か4着はあったと思いますよ~』とこれには怒り心頭であった…。

当のトーホウジャッカルの谷師とは逢えずじまいだったが、前走を終えた時でも誰しもがあの不利を嘆くものだが、サラっと『前が狭くなったからね~』と言うぐらいの谷師で、やや拍子抜けを喰う感じだったのを覚えている。だが内心では期する処は大だったと思う。傍観者の我々が観ていても、トライアルの神戸新聞杯でいちばん印象に残った馬はトーホウジャッカル。不利とそこから外へ盛り返したあの脚であったのだから。サウンズオブアースの乗り替えも凄い事ではあろう。いろんな事が絡んで来るのであろう。この馬もトライアルを真っ直ぐに走っていたら、勝っていただろうと思えるもの。勝っていたら乗り替えはなかったのかも。だがレースは毎回、毎度が勝負。最善の策で行くのがベストであり、当事者が一番良く知っている。


ビデオを何度も観てみる。勝負どころは2周めの3角からの下りであり、4角手前が最大のポイントであろうか。ここでどこを進路を取るのかの瞬時の決断だろう。外を廻る馬は、早めに捲って出て先頭に踊り出る手もある。内で脚を貯めていた馬がそのまま内へ来るのか外へ出すのかも、瞬時のうちに決めないといけない。

逃げたサングラスがやや失速気味となり、先にシャンパーニュが先頭となって2馬身ぐらい前に出た。そこを詰めていくマイネルフロスト。その外へと出してきたトーホウジャッカル。この動きが速かった。外へトゥザワールド、ワンアンドオンリーも並ぶ様に来ていた。それらを少し外へ張る様に廻って出てきたトーホウジャッカル。
4角の生垣の切れめでは、先頭のマイネルフロストに並んでラスト300mを通る時には、完全に先頭となった。そのすぐ後で右ステッキを1発。そしてラスト1Fのハロン棒を通過するあたりで、また1発入れる。
内からサウンズオブアースが迫ってきていた。並ばれて抜かれはしなかったが、半馬身のリードを保ったまま追い合いが続く。そしてそのまま抜かせない勢いでゴールを通過した。トーホウジャッカルが、レコードで今年の菊花賞馬となった…。

3着のゴールドアクターも、夏の札幌で連勝して間に合った昇り馬組か。長い処を専門に使われている様に向いている。それも先行して、前々でレースが出来るのも大事な要因だ。前とは少し水が開いた3着だが、現時点での力を思う存分発揮した事と思える。それぞれが消化できなかったり思い残す事もあったレースかとは思うが、今後の成長を待ちたい。

何か、トーホウジャッカルが菊花賞馬になるための道筋が敷いてあったかの様にドラマチックであった。競馬は点でなく、線で長~く続いているもの。ひとつひとつのレースに必ず鍵、ポイントがあったな~と改めて思えるものでした…。


平林雅芳 (ひらばやし まさよし)
競馬専門紙『ホースニュース馬』にて競馬記者として30年余り活躍。フリーに転身してから、さらにその情報網を拡大し、関西ジョッキーとの間には、他と一線を画す強力なネットワークを築いている。