ベルカントが完勝!サマースプリント・女王へ一歩前進

ベルカント

15年8月23日(日)2回小倉8日目11R 第50回中京記念(G3)(芝1200m)

ベルカント
(牝4、栗東・角田厩舎)
父:サクラバクシンオー
母:セレブラール
母父:ボストンハーバー

北九州記念(G3)の結果・払戻金はコチラ⇒

小倉の芝は差しが決まる。馬場が荒れてきた事もあろうが、それ以上に流れが急激であるのが主因かと思える。ここも前半が32秒台で推移するのは当然と思えた。内を引いた先行馬、ベルカントがどう乗るのか。また6戦全勝のビッグアーサーが重賞初挑戦も注目の戦いであった。
ニザエモンが予想どおりに先手。それに絡むメイショウイザヨイレオパルディナが飛ばす。好位と控えたベルカントが、先行グループを4角を廻って交していく動きが速かった。ラスト1ハロンで先頭に立ち馬群の中から出てきたビッグアーサーの追い上げにも、余裕の先着であった…。


ひとつ前のレースが、10分ぐらい発馬が遅れた。その加減でパドックに急いで駆けつけた時には、もう騎乗合図がかかる。ゆっくりと馬体を見る暇もそうはなかった。返し馬もすでにベルカントが先に入場した後、角田師が近寄ってきて《減るかと思っていた馬体がむしろ増えていて、よほど具合がいいんですよ~》と。少し馬場入りの時はうるさかったらしいが、元気がいい証拠と納得。

スタート時間があっと言う間にやってきた。ゲートが開く。ベルカントも悪くはないスタートだが、真ん中のサトノデプロマットが速い。外のメイショウイザヨイのダッシュが速い。宣言どおりに、ニザエモンが押して押して先頭を主張していく。サカジロロイヤルもムチを入れて出て行き、前は3頭の雁行だ。ニザエモン、メイショウイザヨイにサカジロロイヤル。11.7~10.2で飛ばし、4番手のレオパルディナに4、5馬身の差がついている。ベルカントはさらに3馬身後ろのインにいる。さらに3馬身後ろの馬群にビッグアーサー。流れは予測どおりに速い。

前半3Fが32.7で通過。ここでサカジロロイヤルが脱落しだした。まだ4番手サトノデプロマットは5馬身後ろだ。前の2頭はほとんど馬体をピタっと並べてラスト400を通過。まだ後ろには3馬身の差をつけている。
ベルカントが、3番手のサカジロロイヤルの外へ出して上がってくる。カーブを廻ってきて、一気に前の2頭に急接近してきた。すぐ後ろにサドンストーム。その後ろにビッグアーサーが見える。
ラスト300のオレンジ棒を通過する時にベルカントの武豊Jが右ステッキを入れる。ラスト200mを過ぎて先頭に立った。
サドンストームの内から、ビッグアーサーが姿を現した。外からベルルミエールが脚を伸ばしてきた。3,4馬身ぐらいの差をつけたと思えたベルカントだったが、2番手に上がったビッグアーサーが、ベルカントとの差を少しずつ狭めていった。

最終的にはビッグアーサーにつけた着差は2馬身に満たないが、かなりの差がある間隔であった。何せ、4角を廻ってくる時の脚色は1頭だけ違っていた感だった。
PVを何度も観たりして、ビッグアーサーが初めて馬群の中で揉まれる競馬をしている事に気がつく。傍に来た藤岡康Jにそこを訊いてみた。《エエ、こんな競馬は初めてですが、1回しておきたかったんです》と。やはりイロイロと考える事があるものだと納得したし、改めてビッグアーサーの地力に驚く。

そして次のレースで馬を待つ間に、武豊Jに訊く。《初めて普通の競馬が出来たんじゃない?》と。すると『いやいや、今日も右へとだいぶ行っていたよ。最初から』と言う。素人目には、そんな事があったなんて判らないが、それを矯正して乗っているんだと知る。
ここに来て2連勝。馬も自信をとり戻したことだろう。
《一服してスプリンターSへ行きます》と、角田師が締めくくってくれた。


平林雅芳 (ひらばやし まさよし)
競馬専門紙『ホースニュース馬』にて競馬記者として30年余り活躍。フリーに転身してから、さらにその情報網を拡大し、関西ジョッキーとの間には、他と一線を画す強力なネットワークを築いている。