淀にまたサブちゃんの唄声が流れた!キタサンブラックが粘勝!!

キタサンブラック

16年5月1日(日)3回京都4日目11R 第153回天皇賞(春)(G1)(芝3200m)

キタサンブラック
(牡4、栗東・清水厩舎)
父:ブラックタイド
母:シュガーハート
母父:サクラバクシンオー

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キタサンブラックの淡々とした逃げ、その真後ろをキープしていたカレンミロティック。直線あと200mでは一旦、キタサンブラックを交わしてクビぐらいは出ただろう。そこからキタサンブラックがもういちど差しかえして行く。鼻づらを並べてゴールに入った2頭。場内を埋め尽くしたファンの歓声とともに、電光掲示板には1の数字が出た!そして表彰式の後、北島三郎氏、《さぶちゃん》の唄声がまた淀のターフの上で響き渡ったのであった…。


自宅に帰っても、勝負の興奮と余韻が覚めやらない。家人に頼んでおいたTVのビデオを見る。現場にいてパドックを眺めている時には気がつかなかった、ゴールドアクターの入れ込み具合。あれほど後ろを気にして蹴りを入れるの事を何度もしているパドック。馬場入りの時に17頭がすぐに左へと返し馬をしていったのに、ゴールドアクターだけがゴール板を過ぎてオーロラビジョンの前ぐらいまで歩かせていた。皆と離して落ち着かせようとしていたのが後で判った。ただパドックで見ていて、やけに汗をかいているし、馬体が小さく見えたのは感じていた。
同じくサウンズオブアースもしかり。逆にタンタアレグリアは落ち着いて、なかなか良く見えていた。当然にキタサンブラックは、鶴クビで、気合をそれこそ内面に秘めて一触即発の雰囲気であった。

場内をビッシリと埋め尽くした人、人、人。
生演奏のファンファーレで、さらに盛り上がる。いちばん先にゲートに入っているキタサンブラック。やけにゲート内で落ち着かない。《タイミングが悪かったらどうしよう…》小心者の私は気が気でない。だが、そこはゲートの名手。開いた瞬間にはちゃんと合わせて綺麗なスタート。いち早く、誰よりも前にいた。
すぐに先手となっていく。行くだろうかと思っていたカレンミロティックが、少しダッシュがなかったがそこから前へと出て行った。驚いたのは、サウンズオブアースが前の数頭の中にいた事であった。坂の下りをすーっとスムーズに下りて行くキタサンブラック。ヤマニンボワラクテの暴走もなく、2番手で収まってくれた。ただその内でじーっとしているカレンミロティックの存在が、レースが続く中で、どんどん嫌な予感となっていく。

1周目の直線に入ってきた。先頭のキタサンブラックから1馬身少しで内がカレンミロティック、外がヤマニンボワラクテ。その後ろにサウンズオブアースが、アドマイヤデウスの外にいる。その左後ろにゴールドアクター、マイネルメダリストが並ぶ位置だ。その後ろにトーホウジャッカル。この位置のいちばんラチ沿いにシュヴァルグランがいる。馬群の切れた処にトゥインクル、最後方がレーヴミストラルでだいぶ離れている。
ゴール前を全馬が馬なりで駆け抜けていく。スタンドから声援が上がる。1コーナー、2コーナーと過ぎていく。後ろで少し動きがあった。トゥインクルが外を廻って少し順位を上げて行く。
向こう正面に入る。縦長の隊列だが、ただ1頭レーヴミストラルだけが離れているが、あとの17頭は等間隔で連なっていく。

『前半の2000mが、2分3秒台で通過しています』の場内アナウンスが聞こえる。《いいペースだぞ!、このまま流れてくれ!》と心の中で叫ぶ。トゥインクルが前から8頭目ぐらいに上がったのが見える。《これ以上行くなよ~…》と再び念じる。
2周目の坂の下りに入っていく。ここらでサウンズオブアースが、いち早く手が動きだす。その横をゴールドアクターが上がりつつある。キタサンブラックの手綱はまだ動かないが、2番手のヤマニンボワラクテの手が動きだす。《まだ早い、そこらで動きだすなよ!》と言い聞かせる様に吐きだす。それにしても、カレンミロティックの手応えが抜群でついて来ている。シュヴァルグランもじーっと待っているのが見える。
4コーナーに入る前に、ゴールドアクターがヤマニンボワラクテの外に並びかけてきた。後続馬にスイッチが入った。

内ラチピッタリを廻るキタサンブラック。その真後ろで待つ池添Jとカレンミロティック。ゴールドアクターが追い出してカーブを廻った。それを追う様にトーホウジャッカルも続く。ポッカリと開いた外廻りから内廻りまでの空間。キタサンブラックも追いだした。再び内に白いラチが見えだした時に、ゴールドアクターの内から図ったようにカレンミロティックが前へと出てきた。外のトーホウジャッカルも伸びているが、勢いに差がある。
ラスト300のオレンジ棒。まだキタサンブラックが先頭。ラスト200のハロン棒。ついにカレンミロティックが並んだ。《ああ!、ここまでか!やっぱりカレンミロティックだったか!》と終始、目に入っていた嫌な存在の馬が伸びだしていく。ところが、クビぐらい前に出られたあたりから、何かもう一度差がなくなりだしていく。《エ!、もしかして、もしかするぞ!》とゴール前までのドラマを見ていた。
ゴールに入った瞬間は判らなかったが、双眼鏡でもう一度オーロラビジョンに映しだされた映像を見て、《よっしゃ~!》と確信した…。

北島三郎氏と清水久師、そして武豊Jの3人で検量室前でカメラマンに応えて記念のショット。馬場内へ移っての表彰式、そして勝利者インタビューの時に武豊Jのそばにさぶちゃんも来て、《恒例》の《まつり》が披露された。場内の歓声でその音声がはっきりと届かなかったが、大勢のファンと一体になった瞬間であった。
劇的なハナの差し返し勝利。3200mを走って4cmの差。勝負とは、かくも冷酷なものである。《この勝利は大きいな~》と、しみじみと噛みしめながら帰路についた。


平林雅芳 (ひらばやし まさよし)
競馬専門紙『ホースニュース馬』にて競馬記者として30年余り活躍。フリーに転身してから、さらにその情報網を拡大し、関西ジョッキーとの間には、他と一線を画す強力なネットワークを築いている。