青の勝負服ファインニードル、早くもG1制覇!【平林雅芳の目】

ファインニードル

18年3/25(日)2回中京6日目11R 第48回高松宮記念(G1)(芝1200m)

  • ファインニードル
  • (牡5、栗東・高橋忠厩舎)
  • 父:アドマイヤムーン
  • 母:ニードルクラフト
  • 母父:Mark of Esteem
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発表は良馬場でも少し緩い馬場コンディション。内目を開ける競馬が続く。最内枠のセイウンコウセイが先手を主張、そこへダイアナヘイローが続き、やや速めの流れ。3列目の外にいたファインニードル、ナックビーナス、レッツゴードンキの3頭が直線の坂上でデッドヒートを繰り広げたが、その内から来たダンスディレクターは最後に脚が止まった。1番人気のレッドファルクスは最後まで伸びがもうひとつ、ファインニードルは、ゴドルフィンとなってすぐの週にG1を勝利と劇的なことをいとも簡単にやってのけた。これが世界だ!・・・

前の日の阪神競馬場界隈では桜もそうは目立たなかったのだが、中京競馬場へ行くまでの道のりは、けっこう咲き出している。そのうえにこの陽気、暑いぐらいだ。
場内もどんどん人が増えて、たやすく目的の場所に行けないほど。パドックは場内からでなく、裏手から観させて貰った。春の陽を浴び、とっても毛艶のよく見える馬が多い。パドックの真ん中では、それぞれの馬のオーナーサイドの方が沢山。西山さん御一行、そうそう、緑のスーツを着た香港美女もいた。朝からよく見かけたゴドルフィン関係者もいた。馬よりも、人が目立ったパドックであった。

そしてひと足先にいつもの場所へ戻り、馬場入場から見る。本当にビッシリと入った見渡すかぎりの人であり、名古屋独特の濃い声援が馬にジョッキーにとふりかかる。
キャンターへ移っていく馬。ファインニードルが目の前を過ぎ去って行く。今、充実しているな~と思える感じで走っていく。外ラチ沿い、ファンに近い処をダンスディレクターが駆けていく。休み明けで8歳だが、馬自体は若々しくていい。
しばらくしてファンファーレが鳴る。手拍子で覆い被さる場内の声援。ビッシリ入った3万人が見守るなかでのゲート入り。そしてスタートが切られた。

ゲート自体は五分だったが、大外のラインスプリットが出てから躓いた。一番内のセイウンコウセイが真っ先に飛びだした。すぐリエノテソーロも続く。ブリザード、ナックビーナスと並ぶ外から、ダイアナヘイローが前へと出て行く。1ハロンを行くまでに、ほぼセイウインコウセイに並びかける勢いだ。ネロもグーンと上がり気味となって行く。
2ハロンにかかろうかとする時に、ダンスディレクターが一瞬下り気味となった。不利でもあったのだろうか?レッドファルクスはそう悪くない出から前が詰まったのか、位置が後ろとなって、気がつけばブービーで後ろにはノボバカラしかいない位置となった。 先行馬がしっかりと仕事をして息の入らない速い流れとなり、前半3Fは33.3で次いでの4Fも44.7と、この馬場にしては速いペースで行く。

カーブにさしかかって全馬が見えだした。だいぶ馬群が固まってきているが、少し内を開けて走っていた様だ。レッツゴードンキが3列目だが、一番ラチに近いところを通っていた。外へ出していくファインニードル。前をブリザードが行く。先頭のネロの内へ、レッツゴードンキが忍び寄ってきた。ダンスディレクターの青い帽子も、その後ろから勢いよく続いてきている。
ラスト200、レッツゴードンキが先頭に踊り出た様だ。馬群の一番内からダンスディレクター。外ではブリザード、そしてその外からナックビーナス、ファインニードルが並んで来ている。
やっと赤い帽子、赤い勝負服のレッドファルクスの姿も馬群を縫って現れてきたが、前とは2馬身ぐらい差がある。レッツゴードンキが先頭で粘る、粘る。その外へナックビーナス、そしてファインニードルが迫る。外のファインニードルがゴール寸前で差し届いた様に見えた。

検量室前、意外や意外、高橋忠師もゴドルフィン関係者達も、それほどに大喜びの歓喜ぶりではなく大人の対応、静かに馬を周回させていた。ここらが違うのだろうか。
PVを観る。3コーナーで武豊騎手の位置が少し下がった様に感じた。誰かに邪魔されたのだろうか。そんな疑問も見たかった。だが判らない。笹田師が出てきてそこを説明してくれた。《真っすぐ行こうとしてたそうですよ》と。よくカーブを廻りきれなかったり、慣れない左廻りでそのまま真っすぐ行く馬がいるが、よもやここでこのダンスディレクターがするとは思わなかった。だからあそこで抑えた分で位置が下がったのかと判った。その前の列が上位3頭だから、惜しいポジションとなった。

それとPVを観て良く判るのが、レッツゴードンキの進路である。内とは言いながら馬場の4分どころを通ってきたのだが、ラスト1ハロンぐらいから、外へ外へと流れている。岩田騎手が左ステッキで追いだして行くのだが一度ではなく二度、三度と外へ流れて馬場の6分ぐらいまで出て行ってしまっている。その開いた内、進路が難なくできたダンスディレクターが通ってきている。普通なら脚があれば突き抜けていくところ、惜しいかな脚が止まりだした。
レッツゴードンキは、梅田師も岩田騎手も《出来が最高に良かった。少し仕掛けが早かったのかも知れない》とレース後の談話だが、着差は僅かのハナ差なのであるから、真っすぐに走ってくれていたらと悔やまれるものだろう。

何せ、ファインニードルに運が降りてきていたのと、ゴドルフィンが強運を持っていたと言うことだろう。父、アドマイヤムーンがゴドルフィンに移って10年ちょっと。ついにG1馬を輩出したのであった。


平林雅芳 (ひらばやし まさよし)
競馬専門紙『ホースニュース馬』にて競馬記者として30年余り活躍。フリーに転身してから、さらにその情報網を拡大し、関西ジョッキーとの間には、他と一線を画す強力なネットワークを築いている。