2年目の今年、大ブレーク中のホープ!
2011/9/1(木)
川須栄彦騎手
2010年デビューの川須栄彦騎手が今年の前半から勝ち星を伸ばし注目を集めている。昨年18勝をあげたものの、デビューした年に突如としてフリーに転身。
不安を抱えたまま年が明けるも、▲3キロ減(30勝以下)を活かし、小倉で急成長を遂げて、今や☆1キロ減(51~100勝)で100勝も目前にせまっている。そんな期待の若手・川須栄彦騎手とは?朝の調教後、取材に追われる川須騎手に話を聞いた。
-:競馬ラボ初登場ですね。よろしくお願いします。
川:こちらこそよろしくお願いします。
-:川須騎手は競馬学校に入学が決まってから馬に乗ったそうですが、馬に乗るのが遅かったんですね?
川:もともと体を動かすのが大好きで、プロのスポーツ選手になりたかったんです。中学では野球をやっていましたが体が小さかった。中学卒業後の進路を考えている時に、競馬学校に入れば騎手になる道があるって知ったんです。競馬学校の1次試験は筆記のみで受かったんですが、2次は実際に馬に乗るんです。だから1次試験に合格してから乗馬クラブに行き、その時初めて馬に乗りました。
-:初めて馬に乗ってみてどんな感じでした?
川:最初は、馬に乗るというよりインストラクターが馬を操ってくれて、僕はただ馬の背中に跨っていただけでした。馬のリズムに合わせて腰を上下に動かす正反動なんて知らないから、馬の上でドンドン揺れて「こんなに揺れるのか?」って怖さがありました。
-:それで乗馬クラブに通いつめて2次試験に臨んだんですね?
川:2次試験では子どものころから馬に乗ってきた乗馬経験者と、僕のような未経験者のグループに分かれての試験になりました。僕のような乗馬未経験者は別メニューの試験だったわけです。それから2次試験を合格して、3月の入学まで約4ヵ月毎日乗馬クラブに通いました。それでもなかなか上手くならない。早く上達したかったんです。
-:毎日乗馬クラブに通うとなるとご両親の負担も大きかったでしょう?
川:僕の父は決して裕福ではない一般的なサラリーマンですから、大変だったと思います。趣味として乗馬に通ったのではなく、競馬学校に入る為だけに通わせてもらったんですから、親には感謝しています。
-:競馬学校に入ってみて周りとのレベル差を感じた?
川:そりゃあ感じましたよ。やはり小さい時から馬に乗っていた高倉(稜)と西村(太一)が抜けていました。僕も早く上手くなりたいと思っていました。
-:そんな技術的なレベルの差が縮まってきたのはいつ頃ですか?
川:そうですね3月に入って6月に乗馬の試験があったんですが、その時は教官もびっくりするくらい良くなっていた。8人中3位だったんですよ(笑)。それから「いつか1位になってやる!」って頑張っていましたが、いつも高倉か西村が上にいて、結局1位にはなれませんでしたよ。
-:競馬学校でそこそこ乗れるようになると、トレセンで本物の競走馬に乗った時も違和感なく乗れるものですか?
川:……。もうね、全然違うんですよ。トレセンの実習はまるっきり別の世界でした。トレセンで調教に乗せてもらったんですが、競馬学校で習ったように馬を我慢させようとして力で引っ張るんですけど、そうするとトレセンの馬ってパワーが凄いから持っていかれるんです。また全然上手く乗れない。悩みましたよ。「こんなに違うのか?」って。競馬学校ではハミをかけて手綱を持つ、トレセンではハミを抜いて掛らないようにする。大きく分けるとこんな感じ。乗り方がまったく違うんです。
-:本物の競走馬は調教でもそこまで違うものなんですね。そうなると実戦のレースではもっと難しいんじゃないですか?
川:調教はゆっくりスピードに乗せて行きますから、何とかごまかせるんですが、レースはそうはいかない。最初の頃はレースで乗る度に先輩から怒鳴られてました。自分でも今振り返ってみると「僕がいるだけで邪魔だった」と理解できます。
まだまだ下手だから、時々先輩から怒られるんですが、だいぶ内容が変わってきました。去年は何をやっても怒られたけど、今は「ここはこう乗らなきゃいけないよ」ってアドバイスに近くなってきたんです。それでもレース毎に先輩との腕の差を感じていますから、もっともっと上手くならなきゃいけないんです。
-:そうは言っても昨年18勝で今年は今の時点で、その3倍以上勝っています。通算100勝も近くなってきた今の心境は?
川:関西は▲3キロの騎手に良い馬が回ってくる。今年、勝てたのは良い馬に乗せてもらえたからなんです。☆1キロ減になると以前のような馬の質は望めませんから、勝つべき馬で勝てるかどうかで、僕の将来は変わってくると思います。だから100勝という数字は気にしていません。それよりも減量がなくなっても、乗せてもらえる騎手になることの方が大事だと考えています。
-:これだけ順調に見えても納得するレースは少ないんですか?
川:なかなか納得できるレースはないんですよ。勝っても反省することは多いですし。例えば1番人気の馬で勝ったとしても馬の力だけで押し切るのではなく、「ちゃんとインで我慢できているか?追い出しが早くないか?」など終わってから気づくことも多いんです。
-:ステップUPするために努力しているポイントがあれば教えてください。
川:まずは下半身強化です。木馬に乗ったり、ランニングして下半身を強化しています。僕は、どちらかと言うと内田博さんや川田先輩のような追える騎手を目指しています。綺麗なフォームには憧れますが、僕が綺麗に乗ろうと思っても簡単にできることではないんです。がむしゃらだけではいけないけど、直線で馬を豪快に追う騎手になりたいと思っています。今の時代いろんな意味でアピールしていかないと乗せてもらえませんから。
-:レースでも見ているファンにアピールするような騎手を目指している?
川:競馬を見ているファンや馬主さんに「あの馬、誰が乗ってるんだ?」っていうインパクトを与えるような競馬をしたいです。「あっ川須か!」そう思ってもらえる騎手になりたい。もちろん1つでも多く勝ちたいですが、意外性のある騎手になりたいんです。
-:では、ファンに向けて川須栄彦のどこを見たらいいか教えてください。
川:とにかく攻めている姿を見て欲しいです。僕は考えて乗るタイプではないように思います。それよりもレースで乗っている時の感覚や感性を大事にしています。レースに乗る騎手としては、1日の中でずっと人気馬に乗るよりも上位人気、下位人気とレース毎に波があるほうが良いと思います。
人気馬だけでなく下位人気の馬でも僕の感性にハマれば穴になるかもしれません。……どんな馬が僕に合うか?それは乗ってみないとわからないし、言葉で伝えるのは難しいので、勘弁してください(笑)。
-:じゃあ川須騎手の感性合うようなパターンがあれば教えてください。
川:難しい質問ですね。[ダート中距離で先行馬、内枠]なら人気が無くても買ってみてください。ジリジリ追わすタイプなら人気薄でも3着までに入れるかもしれませんよ。
-:今日は競馬ラボのために時間を作ってくれてありがとうございました。今後ともよろしくお願いします。
川:こちらこそありがとうございました。少しでも上手くなるように頑張りますので、応援してください!
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2010年に本田優厩舎よりデビューし、同年にフリーに。 1年目こそ18勝に終わり、同期であり、同じ栗東所属の高倉騎手に勝ち星は劣ったが、2年目の今年は勝ち星を飛躍的にアップ。 いま、最も勢いのある若手騎手として脚光を浴びている。 |