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佐々木勝利調教助手

道悪はプラス材料に

-:5月の下旬からでしたか、時計を出し始めたのは。

佐:そうですね。5/23からですね。先週、今週と結構、本格的に。蛯名さんも「天皇賞の状態を維持できている」と言ってくれていますね。

-:来週の追い切りはどういう予定ですか。

佐:来週は前走時と一緒で、輸送を考慮して単走で追い切ります。状態を維持させることを念頭に、もし何かあれば修正するといった感じで。

-:その辺は入厩からずっと付き合っている仲ですものね。宝塚記念ですけど少頭数にはなりそうですが、とはいえ豪華メンバーですからね。見立てなんかはどうですか。

佐:とにかくメノは自分の競馬に徹するということですかね。まぁ他2頭は強いですからね。

-:ただゴールドシップには二回とも勝っているんですよね。面白い力関係というか。

佐:今回もあくまで“挑戦者”という形でね。メノの競馬をして、ジェンティルドンナとどのくらいジャパンカップの差が詰まるか。去年とは古馬になって違うと思うし、どれだけ差が詰まっているのか楽しみではあります。

-:阪神コースに関してはどうですか。

佐:右回りで、坂とかも特に環境変わるから、どうこうというより、小回りはメノにとっていいかもしれないです。自分のリズムで走ってくれると思いますけどね。

-:梅雨時期ですけれど、馬場が渋ったりしたらどうですか。

佐:特に渋っても関係ないですからね。弥生賞の時も馬場が悪い中、あれだけの脚が使えるんだから。むしろ、馬自体は気にしないでしょうね。

-:他の馬が気にするんだったら、「むしろ(プラス材料)」というぐらいですか?

佐:そうですね。

-:レース展開といったら、自分の競馬をするのはもちろんなんですけれど、天皇賞のように結構流れてくれたほうが、フェノーメノにとってはいいですかね?ヨーイドンの競馬よりも。色んな意味でシルポートの存在が面白いといえば面白いですよね。

佐:逃げるって、今からもう宣言していますからね。

-:結構いいペースで行っちゃうでしょうからね。抑えながらでも。

佐:あとはもう当日までにベストな状態に持っていって、あとはジョッキーに託すしかないというか。



ジェンティルドンナとは人間も同期対決

-:ちょっと耳に挟んだのですが、ジェンティルドンナの井上助手と佐々木助手は同期なんですね。

佐:競馬学校の同期で学生馬術でも。彼が京都産業大学で僕が日大で。だから応援はしてます、ジェンティルの(笑)。ただ、負けられないっていうか、そういう意識はありますね。

-:井上助手は「絶対フェノーメノには負けない」って言ってるらしいですよ(笑)。

佐:僕はあくまでチャレンジャーですから(笑)。天皇賞みたいな自分のレースができれば、宝塚も面白いな、楽しみだなって感じです。G1を3つも獲っていますので、ゴールドシップだってまだわからないですから。前回で確実にこっちの方が強いってわけでもないですし。

-:こういったライバル関係があって競馬は盛り上がると思うので。パドックや返し馬でのポイントというか、こういうときは期待が持てるみたいな、だいたい普段こんな雰囲気でという目安はありますか。

佐:闘志を内に秘めてるというか、体を使って歩いていました。天皇賞のときも。

-:体重的なものは変わらなくなってきていますか。

佐:そうですね。こっちで510前後で、輸送でだいたい490台でいくんですけれどね。

-:デビュー戦から見てたら、ほとんど大きな増減はないんですね。

佐:デビューのときだけ500ぐらい。こっちだとプラス10キロか、ちょっとあるんですけれど、輸送で490台くらいになりますね。

-:体重が同じでも、中身が違うっていう感じになっていますかね。

佐:トモの張りから、全体のシルエットというか、バランスがイメージした通りに近づいてきてますよね。あとはもう、メノ自身もレースで学んで経験して。

-:またそれを肥やしにして引き出しを増やしてという。ほぼ完成形になってるという感じですかね。

佐:そこまではまだ。伸び代もありそうですね。進化させるというか、なにかあるんじゃないか、って思いながら調整はしてますけどね。

-:上には上っていう言葉もあるので、どこをもって完成とするかっていうのはあるんでしょうけど。昨日、先生が、「だんだん良くなって4歳の秋ぐらいに本当にいい形になるんじゃないかな」っていうお話をされていて。佐々木助手もそういう感じをお持ちですか。

佐:宝塚のレース次第で、またより楽しみになるのか、もう一回やり直さなきゃいけない、立て直さなきゃいけないのか……。そこはわからないですね。



-:いずれにしても大きな舞台で戦っていくっていうのは変わらないでしょうけど。「これだけの馬をやれる経験はなかなかないと思うので、色々プレッシャーもありますけれど、頑張ります」とダービーの前くらいにおっしゃっていて、本当にG1を勝ててよかったなって思っていたんですけれど。最後に宝塚記念に向けて意気込みをお願いします。

佐:この状態で、G1をいくつも勝っている馬にどこまでやれるかと思いますね。ウチはタイトルひとつですけれど、どこまで詰まるかを楽しみに見てみたいと思います。

-:ここを勝って2つ目になれば。この2つ目のタイトルは、単に1つ増やしただけの意味じゃないと思います。

佐:あくまでぶつかっていく。胸を借りるというか。蛯名さんもそんなことを言っていたので。常にベストを尽くして、強い馬にあたっていきたいですね。今、どれくらいの差があるのか。馬によって得手不得手、コース適性もありますし。

-:普通のレベルで考えれば、どこでもいいんでしょうけれど、相手が上がってくれば上がってくるだけ、より適性が求められますよね。

佐:トビが大きいんで、リズムを大事にする馬だから、ある程度流れた方がレースはしやすいんでしょうね。あとは蛯名さんはもうイメージはできてると思いますから。

-:いい状態に作って、あとは蛯名さんに託すという感じですね。

佐:(ジェンティルドンナの)井上の気持ちに負けないよう頑張ります。ジャパンカップも一緒に見てましたからね。

-:ということは、井上さんは結構、声も出ていたんですかね。

佐:僕のほうがなんかこう。アイツは結構、冷静に見てましたよ。

-:あれだけの叩き合いだったら声も出そうですけどね。「どっちだ!?」みたいな。

佐:結構、凄いじゃないですか。周りがガーって言ってるから。そこまで気にはしてなかったけれど、それ以上に声は出てる感じはしなかったね。冷静に“勝ちよった”くらいのことを言っていましたから(笑)。

-:それこそ、あの当時は挑戦者っていう立場だったですもんね。

佐:ダメならダメで仕方ないというか、そんな感じだったんですかね?でもやっぱりプレッシャーかかると思いますよ。あれだけ何個もG1勝って。いくら結果が出て、馬の能力も凄いと言っても、ひとつひとつ井上にもプレッシャーがかかっているはずです。その気持ちに負けないように僕も頑張ろうと思います。

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【佐々木 勝利】Katsutoshi Sasaki

1973年1月3日生まれ。中学3年の頃から馬が近くにいる環境で育ち、当初はジョッキーを目指すも、身長と体重の関係で馬術の世界に進む。日本大学でも馬術部に入り、卒業後は乗馬クラブに3年間インストラクターとして勤務。その後は競馬学校の厩務員過程を経て、トレセン入り。

日々、意識していることに関しては「バランス、それぞれの馬の重心。ハミ受けとトモの動き」と語り、個性に合わせて型にハメずに調教していくことがモットー。馬術の経験を生かして、フェノーメノを筆頭とした戸田軍団の躍進を支えている。