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-阪神大賞典-平林雅芳の目
2012/3/20(火)
日曜阪神11R
阪神大賞典(GⅡ)
芝3000m
勝ちタイム3.11.8
ギュスターヴクライ(牡4、父ハーツクライ・栗東、荒川厩舎)
※※ギュスターヴクライが内ラチ沿いから抜けて初重賞制覇だ!!
スタンド前でオルフェーヴルがナムラクレセントをかわして、先頭に行くのかと思える程の行きっぷりを見せると、場内は思わずどよめく。2コーナーから向こう正面に入り、やや外目を走りながら先頭へと出て行ったが、よもやそのまま外へ行こうとしているとは。
3コーナーに入る時の鞍上の仕草で、場内は異変に先ほどよりも大きなどよめきが。それでも4コーナーでまた外から追いついて行くのにまたまた騒がしくなる場内だ。
そんな一連の動きに、我関せずと内ラチ沿いから抜けてゴールを目指すギュスターヴクライと福永J。場内の『負けて強しオルフェーヴル』の放送に、ちと違和感を覚えながらも、ジズイズ・競馬、これが競馬、ナマモノだ・・と思ったものであった・・。
3コーナー手前からのスタート。先手と思えていたナムラクレセントが行けていない。むしろオルフェーヴルが、この位置かと思える程に前で競馬している。《なるほどね~、最近の競馬パターンは前々でレースをしないと勝てないものね~》と納得の位置であった。
ふたつカーヴを廻って直線に入ってきた時に、ナムラクレセントが外から前へと出てきて所定の位置となった。オルフェーヴルはここでも2番手。《少し外目だが悪くないな》~と思う。ヒルノダムールもいつもより前でレースをしているのに気が付く。あまり前に位置すると終い伸びなくなる馬のはずだったが・・と思いながら見ている。
スタンド前を通って1コーナーから2コーナーと過ぎて行く。ここらではもうオルフェーヴルの方がナムラクレセントより前に出ている。そのまま、向こう正面に入ってオルフェーヴルの位置がやけに外目だなと思う。3コーナーへと向かうあたりで、内の馬群から離れているのに気が付く。池添Jが右手綱を引くのがハッキリと判る。最後方になった馬とブービーの馬の前の位置で10番目となってしまう。しかしそこからがまた凄い、馬群が4コーナーと近づいた時に外からオルフェーヴルがまたまた追いついて先頭に並び出す。すぐ後ろをヒルノダムールとジャガーメイルが追い出してきていた。
カーヴを廻ってきた。ジャガーメイルが外をチラっと見ながら先頭に立つ勢い。内でナムラクレセントが粘る。大外にオルフェーヴルが上がる。その内目にヒルノダムールがいる。内目ではギュスターヴクライがラチ沿いにいる。
直線に入ってきた。ギュスターヴクライがナムラクレセントを抜いて前へと出てきた。その少し前ではジャガーメイルにオルフェーヴルが並んでいる。
残り1ハロンの処では、オルフェーヴルが外から先頭に立ったようだ。そして追い出していったが、少し内目に切れ込んでしまっている様だ。ヒルノダムールがジャガーメイルを抜いて上がってきていた処で、窮屈そうに少し手綱を引いた様に見えた。
オルフェーヴルが内ラチ沿いで先に伸びて行ったギュスターヴクライを追って行くが、なかなか追いつかない。そのまま半馬身の差を保って先にギュスターヴクライが先頭でゴールに入った。
《審議》のランプが点いた。直線1ハロンでの内へのオルフェーヴルの切れ込みの件であろう。それにしても何と言う馬だろう。あの3コーナーでの物凄いアクシデント。逸走気味となって、大方の馬に抜かれてしまっていたはずだ。それからの追い上げ。そしてまた内へと切れ込んでしまっての審議。半馬身差まで喰らいついた底力。確かに負けて強しだろうが、負けてはいけない馬にその言葉はふさわしくない。
1馬力という単位がある。それを人が抑えるのには1馬力以上の力で制御せねばなるまい。道理的に無理だと思う。外へ逃げ出した馬を手綱ひとつで内へと矯正するジョッキー。とてもではなかろう。元々、デビュー当初からヤンチャな馬である。ずーっと乗っている池添Jでも、こんなアクシデントとなってしまうものだ。
勝ち馬に触れねばなるまい。前走のダイヤモンドSでも1番人気と期待された馬だ。それが勝負処でのモタツキで勝てない。先んじられた馬を抜けないもどかしさがあった馬である。しかし今回は内ラチの経済コースで脚を貯めて自分のリズムを保ち、最後まで確実に伸びていった。
待望の重賞制覇。父譲りの3冠馬を負かす血は、確実に受け継いでいたのであった・・。それにしても競馬って怖いですな~・・・・。
平林雅芳 (ひらばやし まさよし)
競馬専門紙『ホースニュース馬』にて競馬記者として30年余り活躍。フリーに転身してから、さらにその情報網を拡大し、関西ジョッキーとの間には、他と一線を画す強力なネットワークを築いている。
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